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【詩】背徳の蒼(あお)と緋(あか)

ふっと
 混ざり合う 吐息 
    尖った静寂が
 肌の上をささくれ立たせる

……ざわり、と
 街の隙間が 甘く腐食(むしば)む夜
     雫(しずく)のように堕(お)ちる
   わたしとあなたの影

舌先が触れるたび
   湿度を孕(はら)んだ鼓動が
  低くなる

ゆるやかに
      バラバラと崩れる境界
 薄闇(うすやみ)の底で
     確かめ合う罪

鏡のような瞳が
   欲(よく)を映して
      研ぎ澄まされた声が
 わたしの奥を 鋭(するど)く穿(うが)つ

── 止まない震え
   狭まる呼吸の隙間へ
 赤黒い痕(あと)が押し寄せ
     痺(しび)れるほどの甘やかな苦痛

もう 戻れない
   静かに深く くぐもった悦(よろこ)びを
      指先で裂きながら
 カツン カツン……と
     夜の路地を彷徨(さまよ)い歩く

そして
 嘆きにも似たかすれ声で
     名前を呼べば
       世界が反響する

限りなく
 蜜のように 散りきるか
   あるいは さらに沈み込むか
        決めるのはいつも
 融(と)け合う唇と唇

淡い光が
    朽ち果てそうなほど
 淫(いん)に満ち
   焦げつく鼓動で
      わたしを犯(おか)す

── その蒼(あお)と緋(あか)との
   綻(ほころ)びから
      またひとつ
 背徳の花が散り、咲き乱れる

触れれば砕(くだ)け
   砕けば溶(と)けあい
 さらに深く 深く
    わたしとあなたに
      降り注ぐ 欲望の雨

……もう
 どこにも 逃げ場所なんてない
    白昼の闇と
      漆黒の光
  その狭間(はざま)に
    きしむほど咲く
      感(かん)じあう命

黙(もだ)しても
 裂(さ)けても
   なお滴(したた)る
     この官能
        そして
 誰も見たことのない
    甘美の地平へと堕ちゆく

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