あみもの短歌

じわっと気に入ったものを抜いていこうと思います

よくきみは寝れるもんだねひとん家の枕でそんなバカな顔して/がねさん
主体がきみに感じる愛おしさがよくわかる。自分もこんな顔をしちゃってんだろうかとふと感じたり、さらには、ここまで君に気を許せてるだろうか?と自問自答する時まであるだろう。

せかせかと回る世界で折り畳み傘のくちゃくちゃ畳み切れない/屋上エデンさん
忙しなく畳んで忙しなく袋に入れた傘はだいたい水も落としきれてなくて家に帰ったあと臭う。畳む間も、あと5ミリが届かないボタンとか、いろんな面倒があるのに追われてしまって畳むことすら急いでしまう、自分。というのを感じる。

アフリカ紀行/あひるだんさーさん
どれも味の想像つかんし、密猟やしって最後に笑ってしまった。ヤンキーと、ヌーの鉄板焼き食べてみたいです。

暑いって言うから暑い理論でさ好きと言うなら好きになってよ/はとサブレさん
これたしか、恋愛短歌同好会かなんかで1回出会った気がしますけど、その時からすごく好きです。好きっていう癖にちっとも好きじゃないじゃんかって時の気持ちが鮮明。好きって言ってくれるだけだと気づいてしまう自分はもう大人なんですよ。といった感じもする。

出かけると聞けば「ランドセルいるかな?」と問いかけてくる一年生は/三浦なつさん
この連作全体が愛らしさとどうしようもなさに溢れてて辛い。可愛らしい一面が目立つからこそのどうしようもなさだろう。子どもたちは大人が考えるより物分りがいいし、だからこそ、返答に困ってしまうような問いだろう。

アトリエは来るべき人を失って跡地のように油絵を抱く/若杉有紀さん
アトリエにむわっとたちこめるあの油絵の匂いは次の入居者が来たってなかなか消えてないだろうし、アトリエだってその匂いと生きていたのだから大切に違いない。キャンバスごと抱き込むみたいに隠して守ろうとしたっておかしくないのだ。

寝てる子を笑わすことはできなくて この子も自分の時計で生きる/実岡まつさん
まだ自分の時計が見当たらないように感じる小さな子どもだけど、この寝てる時間のようにいつかは私の手の届かない時を過ごしていくことまで連想する。

「長いのもきっと似合う」と微笑んで贈ってくれた櫛がまだある/梅丘つばめさん
本当に削除しますかの歌に続くこの歌が、写真かなにか、捨てる確認のあるデータは消せた癖に、捨てるかどうか確認の入らない櫛は捨てきれない矛盾を与えてくれる。

来月も楽しみ(そろそろコロナから抜け出さなければ)


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