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『英語独習法』

 今回紹介するのは,今話題の『英語独習法』(岩波新書)です。著者は,慶應義塾大学の教授である今井むつみさんで,2018年度のNHKラジオ講座「入門ビジネス英語」のテキストに1年間連載したエッセイを再編成し,大幅に加筆したもののようです。

 本書は,10章の章立てになっており,大きく分けると3つの内容に分けることができます(本書で実際に3つに分けられているわけではありません)。

① 知識を身体化させる

 「知っている」という状態から,「使える」へと変えるために必要なことを,「スキーマ(=知識のシステム)」という認知心理学の概念を用いて説明しています。日本語と英語の「スキーマ」のズレを意識して英語を学習することの重要性を具体例を交えながら述べています。

② コーパスの活用

 「英語スキーマ」を探索する方法として,コーパスの活用を推奨し,さまざまなコーパスとその使い方を紹介しています。

③ それぞれの「技能」を身につけるために必要なこと

 「スキーマ」という視点から,主にリスニング・ライティング・スピーキングの学習の仕方についてまとめています。語彙を育むことの重要性と学び方,多聴・多読は効果的なのか,ライティングとスピーキングはどちらから始めるべきかなどについて述べられていて,非常に共感できる内容が多かったです。

 そして最後に,「英語スキーマ」を身につけるための練習問題とその探求例が書かれています。

 最後に,非常に印象に残った部分を引用して終わります。

努力をせず,時間もかけずに「プロとして通じる英語」が習得できる,という思い込みをまず捨てるべきだということを言いたいのである。努力も時間も相応にかける覚悟が必要である。努力をせずに楽に将棋のプロ,スポーツのプロ,料理のプロになれると思う人はいないだろうし,それを標榜する塾やスクールもない。英語も同じ。努力をせずプロとして通用する英語力がつくはずもないのである。

 ぜひ,オススメの一冊です。

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