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『30歳超えると身体にガタが出始める』

 一般的に言われている通説として「30歳超えると身体にガタが出始める」というのがある。体力が低下して昔より動作が愚鈍になっただとか、夜中に何回も目が覚めションベンに行く回数がありえないほど増えただとか、そういった身体への不調が顕著に表れるというものだ。
 はっきり言って、この類の通説は嘘だと思っている。現に30歳を超えた僕はほぼ毎日運動を続けた結果、ガタがくるどころか原っぱを縦横無尽に走り回り、毎日肛門に陽の光を浴びせてはソーラーパワーを充填できるほどに健康状態を維持している。運動とソーラーパワーのお陰で、身体の周りを薄ぼんやりとした光が包んでいることは伝えておきたい。
 僕自身の話は横に置き、この”ガタがくる”系の通説は、少し思考を巡らせてみるとただの俗説だとすぐに分かる。しかしながら、皆そのことを理解しておきながらも説を吹聴して回る。なぜか。俗説に流されることを楽しんでいるし、その俗説が一種の依代として機能しているからだ。依代、依代とは何か。それを理解するためには、通説の楽しい流れに乗らず依代にすること無く、立ち止まって"ガタ"の原因を考えてみる必要がある。すると一瞬で結論にたどり着くことができるであろう。"ガタ"の原因は、運動不足による体力の低下であると。
 では、その原因を潰すがごとく運動に励めばいいでないかと、頭では理解できるのだが身体は動いてくれない。運動は辛いし苦しいし面倒くさいのに加えて、結果の現れが遅いというのもある。そんなコストパフォーマンスの悪い運動行為にふけるより、”ガタがくる・来た”といった類の噂を吹聴するほうが楽しいのは火を見るより明らかだ。運動するより吹聴。肛門日光浴より噂話。「30歳超えると身体にガタが出始める」という俗説を盾にして、運動をしてしまっては余計な事故を生み出すかもしれないという不安を募らせ運動をしない依代にする。
 しかしながら、運動しそれなりの体力を維持しようとも、人間にはどうしても勝てない場面が存在する。それはなにか。病気である。病気により身体が蝕まれ、正常な機能を発揮できない状態に陥る場面は人間誰しもある。最近であれば、コロナウイルスが最たる例であろう。感染してしまえば最大で2週間ほど最大のパフォーマンスを発揮できなくなるし、下手をすれば死に至るという恐ろしい病。そんな病に侵されると、体力云々の問題よりは免疫力という体内機能の問題になってくるからだ。
 して、この免疫機能というのは年齢の増加とともに機能が低下することが証明されている。免疫力のピークは20代が最盛でそれ以降はだだ下がり、40代にもなると20代の半分ほどしか維持できないのだ。体力は運動することである程度維持・増加することはできるのだが、免疫の場合はどれだけ維持に励もうとも低下することには変わりない。
 こも免疫の低下こそが、所謂、”ガタがくる”類の噂の一端を担っているのではないかと思う。先でも述べたように免疫力のピークは20代。それはつまるところ、後はもう下がり続けるしかないということ。その下落の最中にある30代は身体の些細な変化に気づくだろうし、比べる対象が最盛の20代ということもあり、「30歳超えると身体にガタが出始める」といった誇張気味の噂に発展するのではないかと思う。
 先日、久しぶりに風邪を引いた。インフル・コロナ以外の感染症以外で喉を痛め発熱し末端が冷える感覚に襲われた。すぐさま十分な水分と栄養を取り暖かくして就寝したのだが、結局翌日も発熱は長引き医者にかかることにした。少し前であれば、ファミチキを食べて寝れば治るでしょといった雑な対策でも治っていたのだが、今では十分な対策をしたとしても結局、何日か長引くことになる。これが免疫の低下…。と実感しながら、完治したのでこれから酒を啜りに出かけ候。

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