【感想155】クレイヴン・ザ・ハンター
いったん無期限の小休止に入るSSU。その集大成として良いところはちゃんと出て、悪いところは何も変わってなかった。
他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか ★★★★☆
とは言いつつもアクションの感じはとても良かった。
ATJが獣らしい動きで縦横無尽に動き回り、身体能力での戦闘がメインなのもあってアクションシーンのワクワク感はSSUの中でもトップで良かった『モービウス』を上回る良さだった。
シリーズとしての強みでもあるヴィランサイドのキャラが主役というのもあって、人はバッタバッタと殺されていくし善悪の葛藤フェーズも無用で突っ走ってくれる。ヒーローものだと2捻りないと面白がられないレベルまで飽和してる中で、お決まりを軽視して展開できるのは良い強みだなとは再認識した。
メタ的な良さ以外にも、クラヴィノフ家のしがらみの描き方は良いなとも思う。
父親からの強い呪縛を契機に兄弟が徐々に道を違えていったり、兄のセルゲイが父親を嫌いつつも同じような道を辿っていたり。こういうところはヴィランストーリーらしく抗えない運命や性分を見せつつも、今後につなげられるような小ネタ開示が光っていたりと3人の人間関係を描く物語としてはいいものを出してる映画だった。
とは言いつつも恒例の粗さが滅茶苦茶目立つ。
オリジンを描くシーンも、原題についての造詣があってついて行けるのか...?と疑問を持つスピード感。今作のメインヴィランになるライノの見せ場が特になく、終盤でのクレイヴンとの一騎打ちでしかお披露目されない。
かなり緻密な展開を用意してるなと思った矢先に、なんじゃこりゃ、とつぶやきそうになる突発的な展開が起きるのも少なくはなかった。
加えて作風がコメディを取り入れないせいもあって、シュールコントを見ているような気持にもなる。この気持ち悪さを拭うには脚本を詰めてほしいんだけれど、何作やっても軌道修正できないのはSSUに限った話じゃなくアメコミ系全般の宿命な気もする。
ポップコーンムービーとしては十分な映像ではあるものの、それですら違和感がうっすら残る脚本のドライブ感が勧めるのを憚れる要因になるのは全く変わらなかった。
とはいえ『ヴェノム』シリーズのようにあからさまに変な展開やシーンになることはまずなかったし、SSUの中では真っ当に評価しやすい映画にはなってる。こんなに悲しい比較の仕方はないんだけれどさあ。