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【感想161】映画を愛する君へ

 同じようなタイトルだし似たような雰囲気だと思ったけれど、『I Like Movies』と比べたらこっちの方が深く心に残る1本になった。

 映画史とともに監督であるアルノー・デプレシャンの自伝を交えたお話を辿っていく。それとともに映画が好きな人たちの映画に関するインタビューが挟まれたり監督自身の映画観を聞けたりと、映画に対する視点を改めて考えるいいきっかけになる1本としてオススメしたい。アルノー・デプレシャン作品を見た事がないまま行ったけれど、個人的には結構ホクホクで見終えられたし。

他人に勧めやすい ★☆☆☆☆
個人的に好きか  ★★★★☆


 ポール・デダリュスの成長譚を通して監督自身の映画観に関わるエピソードを覗いていく。このドラマパートにあたる箇所はかなりシャッフルされた時系列であったり、そもそも章立てした内容に沿ったエピソードを加えている関係もあって、面白味が強い話というよりは本当にちょっとした小話を聞いているぐらいの気持ちで見るのがいいかも。

 面白いなと感じたのはインタビューの挿し込み方。直前の回答した人へのカウンターになり得るものが来たりする構成のちょっとした意地悪だったり、そもそもの答えた内容が結構思わされる内容だったりと、シンプルな他人の感想を聞く面白さを感じられた。
 特に日本だと静かに見ること、特に敏感な人だと些細な咀嚼音であったりでも気になってしまう人の声が大きくなっている中で、他人の様子込みで映画を観ることの楽しさを見出している人の話でちょっと惹かれてしまった。
 後に本編で出てくる一人の客さえいれば映画は上映される、という話にも通じるけれど、一度きりの多数の他人と時間を共有しながら見る空間の意義を考えているという部分では共感できるところでもあるし、そこで起きるだろう不利益な出来事も楽しんでくれそうな心意義を(勝手に)感じてた。


 衰退産業としてのニュースばっかりが耳に入って鬱屈してしまいそうな中で、終始希望を見出しているこの映画が輝いているなとも思った。とにかく映画館で見ることの面白さや楽しさ、テレビで見た時の体験、誰かとのエピソードに付随する見に行った時の体験。どれも明確にここで心動かされたんだとは言わないところがこの映画の魅力的な所でもあると思う。
 ラストでの一幕もそんな話でもあるので、楽しませてもらう、というよりは楽しみに行く、というスタンスで見に行くのがいいのかもしれない。

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