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【感想153】ザ・バイクライダーズ

 時間合うしオースティン・バトラーとトム・ハーディだしまぁ…ええか。ぐらいのノリだったけど、久々にハマる映画だった。

 最初想像していたライダーたちの強いホモソーシャルムービーとは若干違って、70年前後にバイクを介して出来たコミュニティの一部始終を見守っていく、ヒューマンドラマの方が要素が強めの映画。
そういう意味でも物語的な意味でも、綺麗だし不器用だしかっこよかった。

他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか  ★★★★★


 主人公ベニーの妻であるキャシーの語りから見ていくから、各人物は感情の強い抑揚もなく機微な動きと気持ちが織り交ざりながら時間が進んでいくので、バイクという存在が『トップガン』並みにマニアックな楽しみ方をできる存在ではなく、人を繋げる役割としてのアイテム程度っていうのが万人がとっつきやすい代わりに食わず嫌いさせやすい要因かなとは思った。

 ただ主役二人の関係は面白くて、ベニーは生粋のアウトロー寄りの性分に対して、ジョニーは妻子がいる堅実さに加えてクラブ発足はテレビで見た映画にインスパイアされての事と、根っこの部分が真逆。だからこそジョニーはベニーを気に入って憧れているし、ベニーもちゃんとジョニーに対して信頼を置いている。
この二人に割って入るのが、ベニーが気に入ってすぐに結婚した相手のキャシー。この立場から物語が語られていること、男二人のシーンはあれど真意を語られる場面はないことは男臭さがしっかりあってものすごく好き。

 中盤以降ではクラブが把握しきれない程大きくなり、徐々にギャングとして染められていく過程とままならなさを描いている。焚火を囲って話していた志願兵の話が、物語的な転機だろうと思いながら見ていた。
というのも乗っ取っていったのがベトナム帰りの若者が中心で、時代も60年~70年と戦争真っ只中で男たちがバイクでマイルドヤンキー宜しくつるんでいたこと。これが明確に繋げられるのが焚火での吐露された話で、以降はあからさまにクラブの古株たちの弱さが露呈されていく。
こういった情けなさも今では「良し」とハッキリ言われる時代ではあるけれど、個人としてはどういった思いを秘めているのか、正しいとは言われるけれど自分の中で正しいと自信を持てるのか。葛藤を見えさせたうえでどうなっていくのかを見守っているときは、キャラクターに対してとしてよりはいち人間に対する目線を向けていた。


 存在は知っていたものの、バイクものならどうかなぁと渋っていた割には思いのほか好みをついてくる作品だったのもあって、かなりホクホクな気持ちで見終えられた。
オースティン・バトラー。あんなに掴めない男が似合う役者は娘が出来たら成人するまで見せたくない。

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