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【感想72】バーナデット ママは行方不明

立地と金銭的にピカデリー使うことが増えたけれど、よく上映前の予告流してるときに流れる『おまえの罪を自白しろ』の予告とか見ると本当にメインの客層って舐められてるんだなって思う。
舐めた広告を打てるレベルの相手だからって言われたら本当にその通りだと思ってしまうから仕方ないよな、て呑み込むしかないんだよね。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★

本国では2019年公開だったらしいけれど、むしろ今だからこそ効果的なヒーリングになりそうな映画だった。
ケイト・ブランシェットが惚れ込んだという話も納得の一本。

3人家族の母親として生活を送るバーナデットは家族や身近な仲のいい人以外には攻撃的な態度が多く、常時スマホ越しに話す助手のような存在に自身の不安や不満を吐露し続けたり、家族旅行への不安から来る不眠やより強い抗うつ剤を求めていたりと心身ともに異様さが際立つ。

そんな中で追い込まれたバーナデット、仕事に追われて状況証拠や本人の不審な行動の一部を見ていた夫のエルジーのそれぞれがバーナデットの様子について別視点で交互に語られるシーンがこの映画の本筋として大事な部分になってくる。

エルジーから見れば人見知りをこじらせていたり極度の船酔い持ちの妻が旅行に対する不安がトリガーになってより鬱症状が悪化したように見えるし、そんな話からカウンセラーは彼女には自殺願望がある、と結論付けてくる。

対してバーナデットは子供の病気を転機として自身の輝かしいキャリアから子育てへと多いな情熱の注ぎ先が変わったこと、それによる不安といったマイナスな気持ちが蓄積されていき疲弊していることに対して、仕事に戻るべきという助言を得る事で彼女の中では答えが打ち出された。というところ。

このシーンから描かれるのが自省によるヒーリングや反省・和解の過程というのがいろんな作品と異なる、明確な良さになってくる。
上記の2人それぞれの出した見方自体に間違いはないけれど、それを当人ではない第三者が介入するべきではないというのが伝わってくる。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では母娘がお互いに求めていたからというのもあって家族で乗り越えることが結論となったけれど、この作品では自身のアイデンティティの再確認と自己の振り返りによって活気を取り戻していくし、バーナデット自身がASDっぽく描かれているのもあってその心理に心当たりある人にとってはより納得して見れると思う。


確固たるアイデンティティがあるからこその悩みだったから大半の日本人には的確に刺さるかは怪しいけれど、海外の他人事としてみると程よいエンタメ性を保ってて面白く見れるんだと思う。
『ブルービートル』や『オッペンハイマー』もこの流れでいつかは公開してほしいなあ。

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