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【感想151】動物界
久々に見ている間もゾクゾクしてるぐらい面白かった。
徹頭徹尾、人間と動物との境界を探っていくお話で、身体が明らかな怪物の姿へ変貌する受け入れ難さと他人・動物それぞれに対する視線の違い、様々な側面をもって考え抜いていく。
問いかけでもあるし提示でもあるけれど、これが一人の人間の物語として完成されているからこそ響く映画なんだと思う。
他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか ★★★★★
フランス映画なんだけれど、想像以上に直球の隠喩をはじめとした表現がよく見られた。
冒頭でのフランソワ親子の会話は物語を決定づけそうな話題として、人間と動物の違いについてをあげている。それ以外にも何気なくつぶやく一言がキーになっていたり、終盤にかけてまでの展開でも心境変化や深層心理を明かす行動だったりと、不要な瞬間がない。
主人公の名前がエミールなのも、そういう意味合いなのかなとは思った。フランスだし。
ここまで真っすぐな表現をした後に繰り出される、終盤での2つのシーンがより輝いて見えてくる。
1つは息子のエミールが野生動物のいない森林へと逃げ込んでいる最中、もう1つはフランソワ親子が交わす最後の会話。それぞれがこの映画の根幹を踏まえても、とてもいいシーンになっているので、見た時のお楽しみにしてほしい。
そして動物化したときのデザインがいい。
作中では薬の存在はあるものの、避けることができない事象として扱われてはいる。とはいえ人の意匠は残しつつもモデルの動物の見た目や機能といった特色は大きく受け継いでいるので、動物化した人たちは被害者というよりは同じ人としても扱われない、動物としての側面を大きく見ているような感じ。
この人と動物との差が何なのかを、作中でじっくりと様々な視点を描いている。
ちょっと物足りないなと思ったのはこの動物化したビジュアルが見れるシーンの少なさ。基本暗い画面に薄っすら身体の一部が変貌しているのがみえる程度で、全身を満遍なく見れるのがほぼ1人のみともったいない。
一応何人かの動物化した人物が登場しはするけれど、人間サイドの視点を中心に物語も論理も展開していくので、なかなか凝ったデザインを大画面で眺められるタイミングがない。
ホラーのような雰囲気と題材ではあるけれど、その実かなりの骨太なテーマを描きつつも家族の物語として美しい話も併せ持つ、かなりハイレベルなことやってる映画だなと思った。