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【感想162】ストップモーション
ストップモーション・アニメが好きだしそのホラーなら知れてるレベルの怖さだろうしまあ行けるでしょ、と思ってたけどここ最近で一番体力持って行かれた。
ストップモーションアニメを制作をしている母の手伝いで疲弊していたエラが、自身の手で作品を作り始めた時に陥った一幕。とにかく音の作り込まれ方に拘りを感じられて、ストップモーションでよくあるパンチの強い絵面と相まってかなり厭らしい怖さを持つホラーになってる。しかも話の本筋はかなりわかりやすく明示していることが多めなおかげもあって、わからないものに翻弄されるという感覚があまりない。そのせいでなかなかタフなホラー演出と抹消面から付き合うことにはなったけれど。
他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか ★★★★★
序盤から画面や音声が雄弁に語っていて、その一要因としてエラの主観的知覚をよく使ってくる。仕事と呼べるものに費やしている時間は母の手伝いがほぼすべてだし、そのうえで友達や恋人と夜通し過ごしている。これぐらいハードな日々を過ごしているのもあって、睡眠障害か不足から来る音への過敏性や意識が遠のいている様子が結構出てくる。
特に途中から出てくる少女はかなりわかりやすく苛立たせる態度で振舞ってくるし、エラ本人の心あらずな様子も全編通して出てくるので見逃すことはないしわかりやすいと思う。
個人的にはホラー演出としての音響がすごくいいなと思った。
ストップモーションで作成した映像にリンクするような出来事にエラがあうわけだけれど、ストップモーションでの映像内のノック音の大きさや血肉を触るときの触感も想像させるような生々しさを兼ねた音と、不快感を煽るような音に関してはかなり強い印象を持たせるような見せ方をしてくる。
わかりやすさは話の本筋でもその通りで、かなり明確な暗示が出る。
中盤での母との会話(?)やサイクロプスのアニメーションのお話、制作中の内省的な問答やラストシーンでの動きと、これかな?と辺りをつける必要もない、ストレートにこういう事ですよと言ってるような示し方をするので話の理解が出来ないとかはそう起きないはず。
いちクリエイターとしてのエラの葛藤は『ドリーム・シナリオ』にも通じるものがあるけれど、そのうえで映像・音響でのホラーとしての強度が強く、エラ自身への理解や解剖が無理なくできるテンポでじっくりと蝕まれていくような怖さを体験できたのはすごくいい映画ならではだと思う。
スクリーンでの画面の大きさを映画館のメリットでよく挙げられるけれど、密室でハイクオリティの音響設備で嫌でも正面から向き合わざるを得ない環境で見る、ていう意味では映画館で見るべきホラーとして今後オススメできる一本になった。