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【感想152】ドリーム・シナリオ

 個人的にめちゃくちゃ好きなタイプの映画だった。
ニコラス・ケイジ演じるポールがとにかく振り回される、と思いきや当の本人も一筋縄ではいかない性格をしていて、ホラーテイストになりそうなところがコメディ半分シリアス半分な具合で進んでいく。
ロジカルにコントロールや調整が出来ない、感情的な部分がポイントになる話かなとは思った。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★


 監督の1作目である『シック・オブ・マイセルフ』を見ても思ったけれど、とにかく主人公を嫌われやすい性質にするのが巧い。

 今作のポールは自身では何もしておらず、とにかく不思議な事象に主犯格のような見せ方をさせられている、実質一番の被害者になってる。
だけれど振る舞いが悉く被害者として駄目な態度しかとってない。
本を執筆すると言いつつも本編以前から何もしていない、夢を見た人からトラウマになったと言われても威圧的な姿勢を崩さない、謝罪をしたのも自分が同じ目にあって怖かったからと、どこをとっても真っ当にいい人だなという感想が持てない。
とはいえ普段のポールは温厚でジョークがちゃんとつまらない、不倫する勇気も精力もないカースト下位を体現する人物、というところは生々しいのか面白いのかは人によるとは思う。

 あらすじにもある夢については、規則性や法則性も見出しづらい上になぜそんなことが起きたかは一切明かされないので、実際にポール自身は全く悪くない出来事にはなってる。
中盤以降では嫌な夢を見る人しか出てこなくなり、夢とはいえ毎晩見る可能性もなくはないし、実際トラウマになった人たちの様子も映される。
そんな中でも持ち前の他責性で堂々と振舞うポールに、夢と違うとは思いつつも報復が怖くていじめに近い嫌がらせしかできない第三者たち。特にアメリカなんかだと嫌な思いをしたら高い攻撃性をもって報復していくもんだと思っている中で、やり返される可能性を感じて地味な攻撃しかできない膠着状態になるシーンはより新鮮に感じた。


 SNSを夢としている、現代社会の写しと見ている人もいたけれど、そういう中継は抜きで人間自体を描いているなとは思った。
理論で模れない、不明瞭な存在に対しては感情を抑えて立ち向かうことができないままならなさ。他人の感情を慮れないからこそ生じる集団からの爪はじきにされること。
理屈をはじめとしたロジカルな存在を重要視する風潮ではあるけれど、生き物として、感情という定形的にはかれないものを存外には扱えないことが描かれていた。て解釈しました。終盤での夢に対するNORIOのアプローチや利用の仕方は、この映画で表した夢に対するカウンターとしてよく効いたスパイスになってた。

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