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ミスチルでしか癒えない傷がある -10/5 missyou静岡-


※それなりの曲数ネタバレがあります。追加公演はまたセトリが変わるかもですが気になる方はブラウザバッグ推奨です。



このアーティストのライブに行くのならこの曲を聴きたい、という本命曲がある。


人生初のミスチルライブ・Against All GRAVITYのときなら GIFT、365日、終わりなき旅 あたりだったし、
半世紀へのエントランスのときは and I love you 、花の匂い、タガタメ、くるみ あたり、そして前回に引き続き GIFT だった。

Against〜 のようなアルバムツアーは、たとえるなら英語の小テストのようなものだ。単語帳が渡されて「その中の◯ページ〜◯◯ページまでがテスト範囲だからな。勉強しておくように!」と言われるのと同じように、アルバムが発売され「この中にある曲は絶対披露するからな。(盛り上がれるように予習しといてくれよ、頼むぞ!)」と宣言されているとも言える。一方で、半エンのような◯周年の記念ツアーは、実力考査や入試のようなもの。テスト範囲なんて指定されない。間違えるはずのない簡単な問題からオリジナルの激ムズ問題まで満遍なく出題の可能性がある。(ミスチルファンにわからないマイナー曲なんてあるわけないかもしれない。そんな貴方はミスチル大学があればトップ合格だろう。)


そんなことはさておき。今回の miss you はアルバムツアーだ。出題範囲は決まっている。miss you にある曲は確実に演奏される、いや演奏されない曲の方が少数なはずだ。

それゆえに安心し切ってしまう。 ああ、ここからは出るのね、じゃあ確実に聴けるじゃない、と「これは今回ライブで絶対に聞きたい…!」と熱力の高い願掛けが必要ないと思ってしまう(私が好きなアルバムのラスト3曲は演奏されなかったが(小声))

だからこそ、私の場合「今回絶対に聴きたい曲」はツアーアルバムの中にないことが多い。



Everything (it's you)

今回の私の大本命曲だった。


Spotify で This is Mr.Children を上から流していたときに出会い、一瞬で虜になった。

人生、ひとも本も音楽も、必要なタイミングで出会うのだ。たとえ以前から知っていて特別注目していなかったような場合にも、あるタイミングにハマれば宝石のように輝くことがある。

上京したてだった私には『東京』よりも『Everything』が似合った。

ロッキングな「今から始まるぜ〜!」的な底なしの明るさとはちがう、感情がリセットされるかのようなドラムではじまり、まさしくすべてを包み込むようなメロディで幕開けて、時に父のように、母のように、友人のように、恋人のように、優しくあたたかく、どんな感情状況にも寄り添って落ち着かせてくれるこの曲(今なお現在進行形)は私の上京テーマソングだ。

情けないとき、苦しいとき、寂しさを感じたときには救いや励ましのように、楽しいとき、嬉しいときには晴れやかに、響く。

過ぎ去った瞬間に過去となり二度と帰れぬ思い出となり懐かしさになる「今」は、どれもあまりに眩しく美しい。それらすべては「青春」と呼ばれるもので、あとから振り返ったときに羨ましさを感じるのだろう、そしてそれはほんの少し切なく寂しく、だけど確実に自身の誇りとなるのだろう、となんとなく思う。そんな心の動き、人生の動きをすべて内包しているかのような音楽だから、私にとって御守りなのだ。


だから、どうしてもこのタイミングで生歌を聴きたかった。miss you はこの曲が演奏される可能性のある楽曲群だ と勝手に思っていた。予感があった。主役は miss you の曲たちなはずなのに、Everything さえ聴けたらそれだけでいい、と願ってしまうほどに、どこまでも私の大本命だった。



叫び祈りで、ライブが幕開けた。

桜井さんの口から叫ばれる会場名が、生まれ育った大阪や神戸ではなく、今暮らしている東京でもなく「静岡」という、縁もゆかりもない地であることはかなり新鮮だった。

innocent world、Tomorrow never knows、花火、GIFT、365日、終わりなき旅あたりを知っている、というレベル=一般的とするならば(そもそもそのレベルでしかない人はライブに足を運ばないだろうというツッコミは置いておいて)、かなりディープな選曲ではじまり、寂しさ漂う I MISS YOU、寂しさから荒れてしまった心を彷彿とさせる REM、アンダーシャツ と流れはよりディープでダークな方へと進んだ

はずだった。




ドラムの音がした。

ドラムひと叩きでそれがあの曲だとすぐにわかった。


流れが変わった。

左眼からは自然と涙が、
口元には笑顔がこぼれた。


すべてを包み込むようなサウンド、それでいてまっすぐで全力で、祈りのような桜井さんの「STAY」という叫び、会場の「STAY」「(守るべきものがあると)して」「(迷わず古い荷物を)捨て」の声。


今回聴けるとしてもこんなに序盤に来ると思っていなくて、心の準備なんて一切していなかったけれど、あの日から毎日何度も流しているセトリのプレイリストを聴くうちに、ここしかなかった、と今は思う。



その後もほとんどMCなしに浴びせられるミスチルの音楽。大本命曲を不意打ちに浴びた処理が追いつかずにいて、もちろんすべてを楽しんではいるけれどどこか夢の中にいるような時間だった。

だけど、アート=神の見えざる手 がきた瞬間、現実に戻らざるを得なかった。圧倒的問題作ともいえるこれを演ってしまうのか桜井!と叫びたくなったのも束の間、もはや演技力とも評したくなるほどの圧倒的な表現力。ああ、彼は「表現者」なのだと、どこまでも表現をするために生まれてきた人なのだということに納得せずにはいられなかった。


ライブ終盤には、これまでは生歌を聴くタイミングに恵まれなかった365日(やっと聴けた…!)、「みんなで歌おう」枠で The song of praise、「最近好きになった曲」として End of the day、「もしも心に、背中に羽根が生えていることを忘れそうになった時にはまたここに戻ってきてください」という美しい言葉ののち演奏された 未完 、

そして、半世紀への道を僕らはもう歩んでいるよ、という意思表示かのような 終わりなき旅 、「ここに在ることの感謝」としての Hallelujah 、そして、優しい歌、Sign。


全てが完璧で、最高だった。






私の人生における中高大すべての受験生活はミスチルと共にあった。大学受験前に人生で初めて行ったミスチルのライブはAgainst All GRAVITY、大学受験後コロナ明け初めて行ったのは半世紀へのエントランスの京セラ公演と長居公演。そして、人生ではじめて東京でも大阪でもなく、遠征して参戦するライブはやはりミスチルだった。


人生の過渡期をミスチルと共に歩んできた。
その時々、聴く場面場面で響く曲は異なっているけれど、でもそのすべてが心の中で優しく、美しく、響く。

認識はしていても特段注目していなかった曲が、ある日突然自分にとって特別な一曲に変わる瞬間がある。ライブに行けば、また新たに自分の心を救ってくれる1曲に出会い直すことがある。

そんな風にしてこれからもミスチルと共に、歩んでいくのだろうと思う。


そしてそれはとても、幸運なことだ。





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