大吉に秘めた想い
「おはようございます。ウサギのティースプーンのお時間です」小さなラジオブースの中で、ウサギは優しい声で番組を始めた。その日は、リスナーからの質問に答えるコーナーが用意されていた。
「次の質問は、ラジオネーム『今ひとつ勇気の出ないカメさん』からです。『僕は結果を見るのが怖くて、おみくじを引けません。ウサギさんはおみくじを引けますか?』という質問をいただきました」 ウサギはリスナーに向けて話し始めた。
「なるほど。結果が怖くておみくじを引けないんだね。うん、確かに、運を天に任せるって勇気がいるよね」
「でもね、私、大吉が出ると信じて毎回おみくじを引くの。実は、ほとんどいつも大吉なのよ」ウサギは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「自慢するつもりはないんです。大吉って、前を向いて努力を続けなさいというメッセージだと思うんです」と、彼女は穏やかな表情で語り続けた。「だから、大吉が出るたびに、もっと頑張ろうって思いますね」
「先日、水天宮に行ったら『大大吉』もありますって書かれていて、これは挑戦しなきゃって思ったの。でも、やっぱり結果は大吉でしたね」と彼女は楽しそうに笑った。
番組はこの話題で盛り上がり、ウサギはリスナーからの体験談を紹介しながら、おみくじと大吉について熱心に語り合った。
「素敵な質問をありがとうございました。おみくじの結果なんて、受け止め方次第です。カメさんも気楽に引いてみてくださいね。それでは皆さん、次回もお楽しみに!」と、彼女は番組を締めくくった。
放送を終えたウサギは、静まり返ったスタジオに一人佇んでいた。
「そういえば、カメくんがおみくじを引く姿を見たことがないわね。いつもおみくじを引くのは私ばかり。結果が怖かったなんて思わなかったわ」
スタジオを後にしたウサギは、軽やかに図書館へと向かった。彼の気持ちを思いやる優しい言葉を、心の中で考えながら。