秋色の美食の饗宴
その日、ウサギとカメは、枯葉がひらひらと舞い降りる公園のベンチで、そっと肩を寄せ合っていた。
「葉がひとつ、またひとつと落ちるたびに、季節の儚さが胸にしみるの」そうつぶやくウサギの瞳は、どこか遠くを見つめ、ほんのりと哀愁を帯びていた。秋色に染まる景色の中を歩き出すと、ふと視界に大きなテントが飛び込んできた。
「あれは何かしら?」ウサギの関心は、儚い枯葉の美しさからすっかり離れ、美味しそうな香りが漂うそのテントへと引き寄せられていた。
「美味しいものなんて、この世界に星の数ほどあるけど、もしひとつだけ選ぶとしたら、ラーメンかもしれないわ」ウサギはそっと心の内を打ち明けた。「それは知ってる。君に店を選ばせると、いつもラーメン屋だからね」カメは静かに微笑んだ。
会場に入った途端、湯気と一緒にふわっと香ばしい匂いが広がり、人々はみんなそれぞれの「好き」を見つけて、お気に入りの一杯をじっくりと味わっていた。
「ラーメンって言っても、こんなに種類があると迷っちゃうわね」ウサギは小さく首をかしげながら、お店が並ぶ景色をじっと見つめた。「こういう時はね、少し視野を広げて、五感を静かに研ぎ澄ませるの」
「決めたわ。ここにする」ウサギは小さくうなずき、一歩を踏み出すと、ふわりと振り向いてカメに微笑んだ。「だって、ここが一番行列が長かったんだもの」
「美味しいわね、豚骨ラーメン。濃厚なスープに、チャーシューと煮卵の組み合わせが最高ね」ウサギは満足そうに微笑んた。
「デザートはかき氷で決まりね!」
ウサギは今度は迷うことなく、細い指先でそっとお店を指さした。
「秋のかき氷もいいわね。かぼちゃもキャラメルも大好きなの」ウサギは幸せそうに微笑みながら、スプーンを口に運び続けた。
かき氷食べ終えたウサギは、ふるりと小さく身体を震わせた。「身体が冷えちゃったから、次はラーメンで温まらなくちゃね」彼女はそう口にすると、二番目に長い列のお店に向かって、楽しそうに駆け出していった。