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文字を巡る小さな冒険

その日、ウサギは図書館の分類番号829の書架の前で一冊の本を手に取った。そっとページをめくると、そこには異国の文字が、遠い国から届いた手紙のように並んでいた。

 「文字って、どこか不思議で謎めいているわ…」まるでその答えがこの場所に隠されているかのように、その声は静かに響いた。

その時、カメが静かに通りかかった。
「文字に興味があるならいい場所があるよ」 カメは柔らかく微笑みながら、そっとウサギの手を取った。

東洋文庫ミュージアム

館内に足を踏み入れると、二人を迎えたのは、天井までそびえ立つ書架と、その中に整然と収められた無数の本たちだった。

「これが世界最古の文字なのね…」
ウサギは目を細めながら、展示された資料にじっと見入った。
「まるで別の星の言葉みたい…」

西アジアの楔形文字碑文

「このヒエログリフは読めるかな?」
カメは、少し離れた場所から、小さな声でそっとウサギに呼びかけた。

「辞典を見ると、って書いてあるけど、辞典ってどれのこと?」ウサギは展示ケースの中に視線を落とした。

ヒエログリフ辞典

ウサギはじっと資料を見つめていたが、カメの横腹に指先を伸ばし、軽くつついた。
「これ、私に読めって言いたいの?」

 「ヒントはね…いつものセリフかな」
その一言に、ウサギは首をかしげていたが、突然、大きな瞳をぱっと輝かせた。

「答えは…『お腹すいた』、とか?」

まさか当たるなんて…

「これはナポレオン辞典だね」
「ナポレオン?辞典?なんか、そんな名言があったわね…」

ナポレオン辞典

「これは、ナポレオンが作らせた漢字辞典なんだ。この漢字は見たことあるかな?『龍』を四つ集めた文字なんだけど…」

読み方は「テツ」

「初めて見るけど、どういう意味なの?」
「この漢字は『おしゃべり』という意味なんだけどね…」

ウサギは小さくコホンと咳払いをしながら、これ以上ない笑顔で微笑んだ。
「それって、もしかして私のことを言いたいのかしら?」

「いや…それは永遠に解けない謎だと思う。そして、そこが文字の魅力なんだ」
袖をしっかり掴まれたまま、カメは少しだけ遠くを見つめて、ぽつりと呟いた。

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