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ラーメン狂想曲
その日、ウサギとカメは目黒駅で電車を降りると、行人坂を風のように駆け下り、ホテル雅叙園東京へと辿り着いた。
二人はそっと身なりを整え、優雅な足取りでエントランスを抜ける。時の記憶を宿したエレベーターの扉が静かに開き、吸い寄せられるように足を踏み入れた。
「ねえ、今日のランチは何にする?」
百段階段を上りながら、ウサギはカメに問いかける。「やっぱりラーメンかしらね…?」
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「ちょっと待って!」
カメはビクッと顔を上げ、慌てて手を振る。
「昨日もその前の日もラーメンだったよね? さすがに、今日は違うものがいいと思うんだけど…」
「えっ、そうだったっけ?」ウサギは首をかしげると、ふわっと笑った。「じゃあ、点心のセットメニューにしよっか♪」
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「…ちょっと中華から離れてみない?世界は広いからね。例えばイタリアンとか。パスタなら好きだよね?」
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「うーん…」ウサギは小さく唸り、しばらく考えたあと、ぱっと顔を輝かせ、ふわっと笑った。「ラーメンじゃないなら、ガツンとお肉にしちゃう?元気出そうだし♪」
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「串焼きもいいわね! いろんな種類をちょこちょこ食べられるし、それに、揚がるまでのドキドキ感! あれがたまらないの♪」
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「もう、いっそのこと、フランス料理なんてどうかしら?」 ウサギの目がキラリと光った。「もう、今日は好きなものを好きなだけ!食べまくるわよ!」
「食べまくるって...」カメは笑って呟いた。
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ふと、ウサギは小さな違和感を覚えた。 そっと視線を巡らせると、まわりの人々がどこか冷ややかな目を向けているように見える。ウサギはカメの腕をとり、そっと部屋の隅へと誘った。
「ミニチュアの食べ物を眺めながらランチの相談をしているのなんて、きっと私たちだけよね…」
「もっとこう、芸術として味わうべきなのに…」その瞬間、静寂の中に ぐーっ と、小さなお腹の音が響いた。
ウサギはお腹を押さえながら、湯気にゆらめくラーメンみたいにふらふらと揺れた。 ふわりと、床が近づいてくる。
その瞬間、優しい腕がそっと背中を支えた。
「まったくもう…」
カメは小さく息をつき、そっとウサギの髪をなでた。