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雨の季節の甘い出会い
その日、下北沢の真ん中でウサギはとてもご機嫌だった。シャツの入った袋を胸にしっかりと抱きしめると、宝物を手に入れたような幸福感に浸りながら、周囲の視線を気にすることもなく、その場で一回転して飛び跳ねた。
「この街を歩くと、どういうわけか古着が欲しくなるの」と彼女は言った。
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笑顔を振りまきながら歩いていたウサギは、ふと足を止めた。
「シーズンメニューあじさい?」
ウサギは少し首を傾げて写真に近づいた。
「なんか、たまらなく可愛いんだけど」
甘い香りを想像しながら、彼女の心はときめき始めた。
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「待って!」
ウサギは少し先を行くカメに呼びかけた。彼女はカメの手を取ると、店に続く階段を一段一段ゆっくりと登って行った。
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店の中で、ウサギはカフェのメニューをじっと見つめていた。「紫陽花ショートタルトにしようかしら。でも、紫陽花ジュレソーダも捨てがたいわ…」彼女の小さな声が、テーブルを挟んだ向かいのカメの耳に届いた。
「いつも通りでいいんじゃないかな」とカメは静かに言った。
彼の言葉に、急に迷いが消えたウサギは、「それもそうね」と頷くと、店員を呼び止め、弾んだ声で注文した。「両方ください」と。
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「ソーダの中のジュレが、甘くてぷるぷるしているの。アイスクリームに乗っている白あんの紫陽花も、とてもかわいらしいわ」
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「ショートタルトにも紫陽花が咲いているの。まさに紫陽花尽くしね」
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「六月は雨ばかりだと思ってたけれど、この時期にしか咲かない花があったり、その花をモチーフにしたスイーツもあるのね。なんて素敵な季節なのかしら、やっと気づいたわ」
カメは彼女の言葉に穏やかに微笑み、「一緒に素敵な季節を過ごせて良かった」と静かに答えた。
雨の合間に訪れたこの甘いひとときが、まるで二人の心をそっと包み込むように、優しく流れていた。