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迷いネコの帰るところ
その日、カメが待ち合わせの場所に向かって歩いていると、聞き慣れた足音が、視線の先から聞こえた。じっと目を凝らすと、風に乗るように駆け寄ってくるのが見えた。
「あっ、ちょうどよかった。あなたに探してもらいたいものがあるの」 ウサギは息をつく間もなくカメの手を握ると、迷いのない足取りで歩き始めた。
「待ち合わせまで時間があったから、公園で絵本を読んでいたの。そうしたら、絵本の中の白いネコが逃げちゃったの…」
「白いネコ? 詳しいことは分からないけれど、とにかく見つければいいんだね」
カメはそっと手を引かれながら、懸命に歩調を合わせた。
街をさまよい歩くうちに、ふと二人の足が止まった。見ると、そこには、どこか異世界からこぼれ落ちたような、不思議な空間が広がっていた。
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二人は、物語の世界へと続くかのような門を静かにくぐり抜けた。目の前には、細い階段が緩やかに曲がりながら、不思議な雰囲気の建物に絡みつくように伸びていた。
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「ここなら、白いネコちゃんがいそうだね」 カメはそっと辺りを見渡し、その気配を探るように目を凝らした。「ほら、あそこ!」
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「あれは飾り物じゃない?もし隠れてるとしたら、こんな場所かも」ウサギはそう言いながら、小さなドアをそっと開けた。 けれど、白いネコの姿はどこにもなかった。
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「あれからずいぶん時間が経っちゃったし、お腹を空かせてるはずよ。私の勘だけど、きっと食べ物がある場所にいるわね、いつもの私のように…」
ウサギの瞳がふと、一軒の店に吸い寄せられた。そっと覗き込むと、小さく息をのんだ。
「あ…いたわ。あの白いネコよ」
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「サイダーの上にちょこんと乗っているなんて、やっぱりのどが渇いていたんだね」カメは白いネコを抱えながら優しく笑った。
「お腹がいっぱいになったら、ちゃんと絵本の中に帰るのよ。だって、君のことを待ってる猫がいるんだから」ウサギが優しく囁きながら、そっと手を伸ばすと、白いネコは静かに尻尾を揺らした。
ベンチに腰掛けると、彼女は絵本のページをそっと開いた。白いネコは、少しだけためらうようにページを見つめていたが、中へふわりと飛び込んでいった。