高架下の手作りの街
「電車が見たいの」と言うウサギを連れて、カメは秋葉原駅に降り立った。
「電車を見る前に、ちょっと案内したい場所があるんだ」と言いながら、カメはそっと彼女の手を取り、改札口をくぐり抜けた。
線路の高架を横目に、御徒町駅方面へ歩いて行くと、ひとつの看板が目を引いた。
「2k540ってなに? AKI-OKAってどういうこと?」ウサギは首を傾げてカメを見つめた。
「2k540は、『ニーケーゴーヨンマル』と読むんだけど、東京駅から2540メートルの位置にあるという意味なんだ。鉄道の起点は東京駅だからね」と、カメは静かに説明した。
「そうだったのね。知らなかったわ」
ウサギは驚いた顔で振り返ると、カメを見つめた。
「AKI-OKAっていうのは、秋葉原駅と御徒町駅のことなんだ。この場所はちょうどその間に位置しているからね」とカメが説明した。「なるほど、そういうことね。これでこの暗号みたいな名前も覚えやすくなったわ」と、ウサギは納得したように頷いた。
「ここには手作りにこだわるお店がたくさんあるんだよ。世界に一つだけの傘をカスタマイズできるお店や、ここでしか手に入らないアニマル雑貨のお店もあるんだ」と、カメは説明を続けた。
「見て!万華鏡のお店があるわ」
ウサギは声を上げると、お店に駆け寄った。
ウサギはそっと万華鏡を手に取った。
「この三角の万華鏡も手作りだから、同じものは二つとないのね」
隠れ家のような手作りの街で、ウサギは時を忘れるほどその魅力に引き込まれていた。
「そろそろ電車を見に行こうか」とカメがそっと声をかけると、ウサギは名残惜しそうに頷いた。
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