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南極大陸への逃避行
その日、ウサギは図書館の閲覧席に座るカメの顔を見た途端、気持ちを吐き出すように大きなため息をついた。
「もう、いやになっちゃう。ラジオ番組でめちゃくちゃ噛んじゃったの。昨日の夜、甘いものを食べ過ぎたせいかしら…」
ウサギの口の中には、昨夜の甘い記憶がまだ微かに残っていた。
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「もう、どこか、世界の果てまで行ってしまいたい気分なの」
「例えば、南極とか…かな?」
カメが問いかけるような目を向けると、 ウサギの瞳がキラリと輝いた。
「いいわね、南極。きっと真っ白な世界がどこまでも広がっていて、私の心を清らかにしてくれるわ!」
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二人が秘密基地のような広いフロアに一歩足を踏み入れると、その視線の先には、極寒の地で暮らす動物たちや、見たことのない観測機器が整然と並んでいた。
「南極って本当に氷の世界なのね。その白い大地で、観測隊の人たちは一体、何を追い求めているのかしら...?」
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「南極の氷は、一番厚いところで4900メートルにも達するんだ。その氷は、毎年降り積もった雪が溶けることなく、長い年月をかけて積み重なったもの…」
「氷の中には、まるでタイムカプセルのように大昔の空気が閉じ込められている。それを解析して、過去の地球の姿を解明することが、彼らの使命なんだよ」
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「ということは、昔の地球の環境を調べて、これから起きることを予測し、より良い未来につなげようとしているのね?」
ウサギはふと顔を上げた。その瞳には、何か思いついたような光が宿っていた。
「つまり、私も、これまでの失敗をちゃんと振り返って、しっかり反省して、それを未来に活かしなさいってことなのかしら?」
「そんな感じかもしれないね」
カメは静かに微笑んだ。
「そういうことなら、観測隊の人たちを見習わなきゃ」ウサギはそっと目を閉じた。
瞼の裏に浮かんだのは、果てしない白い大地と、その上を冷たい風を切って駆け抜ける自分の姿だった。
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