異国につながる海
山下公園を後にしたウサギとカメは、海を横目で眺めながら、港の見える丘公園へと足を向けた。「ベイブリッジの向こう側は、もう太平洋だね」カメがそう言うと、ウサギは長い髪を風に揺らしながら目を細めた。「海はいつ見ても心を開放してくれるわ。遠くの国が少し手を伸ばせば届きそうに感じるの」
彼女の隣を歩きながら、カメは遠い記憶を辿っていた。「海は遥か異国の海とつながっている。ワイキキビーチもそうだ。あの時、僕はビーチを端から端まで泳ぎ切ったんだ。海の中で高級ホテルを眺めながら」
「えっ、そうなの? ワイキキビーチって、大きなパラソルの下でブルーのカクテルを飲みながら、二人でうっとり過ごす場所だと思っていたけれど、違うの?」ウサギが驚いた様子で首を傾げた。
カメは微笑みながら答えた。「そういうイメージも間違いではないけれど、僕にはビーチが賑やかすぎた。だから海で泳ぎながら静けさに浸っていたんだ。そう、あれはホノルルマラソンの翌日で、クールダウンも兼ねていたんだよ」
ウサギはカメの方に身を乗り出してくると、「ワイキキって、美味しそうなパンケーキや巨大なロブスターがあるって聞いたわ。一度行ってみたい。いつ連れて行ってくれるの?」とカメの袖を引っ張った。
カメはウサギにゆらゆらと揺すられながら、一人静かに物思いに浸っていた。「海はいいよね、どこまでも自由で」