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【短歌】 ラブソング


夢で見た知らない街の戦争で目覚めた朝にホッとしている



エッセイが読めなくなった 世界から悲しみだけが届いてしまう



読みかけの本の隙間に落ちていた髪の毛だって僕の分身



時間より真っ直ぐ届くものがある
「ラブソング聴く?」
救われている



空を見ることが好きで、いつも空を見上げている。
そのまま思いっきり息を吸いこむと、なんていうか、細胞が総入れ替えをおこして体内が澄むみたいな、そんな感覚に一瞬なる。
幸せな気持ちで今日を生きている。
私が私の世界で生きているように、誰かには誰かの世界があって、行こうと思えばその日のうちに行けてしまう距離に、戦争がある。

想像する。

私はそこにいる。生まれ育った町が戦場になったから、安全だと聞いた場所まで、家も、好きだった風景も、大切にしていた物もほとんどそのままにして逃げてきた。
途中、何度か死体を見た。生まれて初めて死体の横を通った。息を止めて、必死で目を逸らしながら通り過ぎた。思い出すとしんどい。あの人たちだって、数時間まえには笑ったかもしれない。早くこの戦争が終わってほしい。それまで、殺されないように隠れながら暮らさなければならない。
ほとんど屋外みたいなスペースで暮らしている。寒い。トイレになっている場所はひどく汚いし吐きそうな臭いがする。
絶対に死にたくない。
だけど今朝になって。
重そうな銃を持った兵士がやけに堂々と歩いて来て、「表へ出て並べ!」と繰り返し怒鳴っている。すでに並んでいる人がいる。言う通りにしなければ撃たれるんだろう。
でも並んだらどうなる?

想像する。
他に何もしない代わりに。
逃げ場所が存在しないことを想像する。



爆弾が降る空の下であなたは命の優先順位を決める



飛行機で行ける距離だよリスボンも
今日殺されるあの子の町も










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