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個性とシーシャはどう結びつく?SWAYとBRO SHISHA STUDIO店長が語る、それぞれのシーシャの味

こんにちは、ライターの伊藤美咲です。

前回に続き、高円寺にあるシーシャ専門店「BRO SHISHA STUDIO」とのコラボ企画として、「SWAY 渋谷松濤」店長・井戸悠登と「BRO SHISHA STUDIO」店長・前田大吾さんの対談をお届けします。

今回はシーシャプレイヤーとしてこだわっているポイントや、個性とシーシャの関係性などについて語ってもらいました。

作る人によって味が変わる」と言われるシーシャですが、どのようにして味に変化がもたらされるのでしょうか。さらに、店長目線で見るシーシャ文化の現状や今後のトレンドの予測も伺いました。

井戸悠登 / SWAY 渋谷松濤 店長
1998年10月2日大阪府東大阪市に生まれ、幼少期は埼玉県和光市で過ごす。父親の仕事の都合で小学校卒業と同時に中国上海へ転勤。中高大を中国で過ごす。中国でシーシャの存在を知る。コロナ禍の2020年に日本に帰国しシーシャ専門店を知りシーシャにハマる。そこからそれまで以上に家シーシャを極め、出先でもシーシャを嗜み、更なる勉強のために2022年4月SWAYに入り今に至る。

前田大吾 / BRO SHISHA STUDIO 店長
福岡生まれ。大学から東京へ上京し、学生時代はよさこいと機械工学に熱中。早稲田大学を卒業後、同大学院/総合機械工学へ進学。リアルな出逢いと繋がりの創出に興味を持ち、2021年高円寺にBRO SHISHA STUDIOを創業。また、「HOOKAH BATTLE MIX&STORY in 2023」部門で世界2位に。

お客さまを満足させるだけではダメ。感動を生むことが大事

前田:シーシャは、作る人によって味が変わると言われていますよね。僕は自分のことを「影努力型のエンターテイナー」のシーシャプレイヤーだと思っています。

井戸:影努力型のエンターテイナー!?

前田:僕は約10年間ずっと野球をやっていたんです。高校生の頃は休み時間を惜しんで筋トレをしていて、パフォーマンスを上げたりレギュラーを勝ち取ったりするために頑張っていました。

井戸:まさに影努力型ですね。

前田:大学時代にはよさこいをやっていたのですが、そのときのテーマが「目の前の人の感情を揺さぶる」でした。なので、シーシャでも「準備期間にきちんと修行をして、お店に来てくれた方に感動を与える」というのが僕のシーシャのテーマであり、個性です。

井戸:なるほど。シーシャプレイヤーってどんな人も少なからずシーシャの練習はすると思うんですけど、その練習で差別化していた部分はありますか?

前田:シーシャの味は、練習時間や方法で全然変わるんですよね。たとえば、ダブルアップルのフレーバーをずっと同じセッティングで作るのと、「どうしたらこのフレーバーの潜在能力を引き出せるだろう」と考えながら作るのでは大きく違います。

シーシャの練習は「この味を出せるようになろう」と目標を立てることが多いと思うんですけど、「このセッティングだったらこの味」「こうすると味がこう変わる」という部分までわかるようになると、かなり幅が広がると思います。

井戸:めちゃくちゃ研究されてますね。独学ですか?

前田:基本的には独学ですね。人に教わったり海外のYouTubeを見たりすることもあります。

井戸:前田さんがシーシャを作るときに大事にしてることってなんですか?

前田:まずはお客さまのヒアリングですね。「オレンジ味のシーシャを吸いたい」と言われたとしても、お客さんが想像する味と僕の想像する味、シーシャで作れる味の限界値があるので、それらの調整をしなければなりません。

「ミント入れてください」と言われたとしたら、「強・中・弱で言うとどれくらいですか?」「ペパーミントのガムっぽいイメージですか?」など共通言語を使いながらヒアリングすることを大切にしています。

井戸:徹底していますね。SWAYでも、ヒアリングはしっかりとするようにしています。共通言語を使ってイメージの擦り合わせをしていくことは、大事ですよね。

前田:イメージの擦り合わせをした上で、どのようにいい意味で裏切るかが肝だと思っていて。お客さまは満足するだけだと、2回目は来ないんですよ。期待を上回って感動が生まれたからこそ、また来たくなると思っているので、「どうやって感動を生むか」を日々考えています。

井戸:具体的にはどのような手法を使っているんですか?

前田:お客さまの要望を汲み取りつつも、あえてちょっと違う系統のフレーバーを混ぜてみるとか。それによって、新たな旨みを味わってもらうことを狙っています。

井戸:いいですね。これも自分の性格と紐づくところがあるんですけど、僕は結構負けず嫌いなところがあるんです。

だから、吸いづらいと言われがちなフレーバーがあったとしても、扱い方次第で美味しくできると考えて研究しています。「このフレーバー苦手なんですよね」と言われたら「このフレーバーと合わせると美味しくなりますよ」などと提案することもあります。

前田:マイナスをプラスにすることで感動を生んでいるんですね。

シーシャ屋は「空間と人の両方に人がつく」状態が最高の形

井戸:前田さんはシーシャに出会ってから、これまでどのくらいの時間シーシャに触れてましたか?

前田:最初に家でシーシャを吸っていた頃は、週に3回程度。別のシーシャ屋に勤めていたときは週5で働いていて、自分でお店を立ち上げてからは、365日中360日はシーシャに関わっていますね。井戸くんは?

井戸:僕ももともとは家でシーシャを週に3回くらいの頻度で作る程度だったんですけど、去年の4月にSWAYに入ってからは週5で働いてシーシャに触れています。

SWAYは条件を満たさないとお客様にシーシャを提供できないので、最初の頃は休日に朝から練習することもありました。「BRO SHISHA STUDIO」でも、お客様に提供するための条件やチェックはありますか?

前田:ありますね。僕と兄を含めた3人でチェックをして、基準を満たしていたらOKとしています。シーシャが美味しいことは前提ですが、僕たちはプラスαの表現や個性も特に重要視しているポイントではありますね。

井戸:前田さんが個性を大切にする理由はなんですか?

前田:店舗目線になっちゃうんですけど、シーシャ屋は「空間と人の両方に人がつく」状態が最高の形だと思うんですよ。たとえば、チェーン店の料理だと誰が作ったかは関係ないじゃないですか。でもシーシャ屋は人にファンがつくし、それが売り上げにも直結する。そのバランスがすごく大切だなと思っています。

空間満足度がめちゃくちゃ高かったら、チェーン展開も良いと思うんですけど、「BRO SHISHA STUDIO」の空間満足度はまだ伸び代があると思うんですよね。だからそこを補う要素としても、スタッフ一人ひとりの個性が大事だと思っています。

井戸:それぞれの個性はあるけど、どのスタッフが作ったシーシャも美味しいお店であることが空間満足度にも繋がりますよね。

井戸:僕はよくシーシャを料理に例えるんですけど、アップルパイを作る場合って、そのシェフが使うりんごのブランド選定や生地感、焼き加減などで味が変わるじゃないですか。でも、できあがるのは同じ“アップルパイ”という料理。これがお店としては正しいやり方だと思っています。

前田:なるほど。

井戸:だから、僕もシーシャと個性は紐づくと思っています。すごく慎重な性格な人だったら、火力を上げすぎずじわじわと熱を加えていくとか。美味しいシーシャという目指すべきゴールへの向かい方は人それぞれにあるんだと思います。

前田:あと、フレーバーの数が個性の引き出し方に関わると思います。もしお店にフレーバーが10種類しかなかったら、できることが少なくなるから個性が生まれない。数が多い方が選択の手段が生まれて、パフォーマンスの幅の広さにも繋がります。

井戸:「BRO SHISHA STUDIO」では何種類くらいのフレーバーを置いてるんですか?

前田:150種類くらいですね。そういえば、この前お客さんに「あともう一人で、スタッフさん全員にシーシャを作ってもらったことになります」と言われたんです。お客さんの中には「この人はどんなシーシャを作ってくれるんだろう?」と楽しみにしてくれている人もいるんですよね。

井戸:うちもスタッフ同士で「このシーシャを作ったのは絶対あの人だ」という会話をしたことがあります。やっぱりその人の好みや癖がシーシャに現れるんですよね。

前田:シーシャ屋に来る人には、コミュニティや人との繋がりを求めている人も少なくありません。スタッフとお客さまが良いコミュニケーションを取るためにも、個性は大事だと思います。

井戸:お客さまの心に寄り添える場所や人になれたらいいですよね。

シーシャ屋が生き残るには「味」と「内装」が鍵

井戸:今後のシーシャ文化はどうなっていくと思いますか?

前田:今シーシャ文化は盛り上がってきてるんですけど、その一方で閉店する店舗の話も耳にします。今は全国におよそ1250店舗のシーシャ屋があるんですけど、増減を経て、1500店舗くらいに落ち着くんじゃないかと思っていて。その中で、特に関東は内装がきれいなお店が生き残ると思います。

井戸:なぜですか?

前田:関東には地方からいらっしゃる方も含めて上質なものを求める感度の高い方々が集まりますよね。

内装やおしゃれさをきっかけにシーシャ屋に来た人が、シーシャそのものにハマって美味しい店を探しに行く流れがあるんじゃないかと思います。

その結果、内装もきれいなハイエンドのお店のリピーターになっていく構図があるんですよね。逆に地方は親しみやすいお店の方が良くて、ファッションでシーシャ屋を始めたお店はどんどん閉店していくと思います。

井戸:なるほど。各店舗が生き残るために、シーシャ屋のレベルはどんどん上がっていくと思いますか?

前田:思いますね。シーシャ屋は、お店によって価格差があまりないですよね。同じお金を払うなら絶対に美味しいところに行きたいと思うので、味にこだわってないお店はどんどん厳しくなっていくと思います。

井戸:たしかに。飲食店だとリーズナブルなチェーン店から高級店まで幅広いけど、シーシャ屋はそこまで価格に差がないですもんね。

前田:逆に、価格の幅が出てきたら面白いなとも思いますけどね。井戸くんの考えはどうですか?

井戸:「味にこだわってないお店は厳しくなっていく」というのは僕もすごく思っている部分ですね。内装がめちゃくちゃきれいでも、味が良くなければリピートされないので。逆に言えば、味と内装を良いクオリティで保っていれば生き残れるんじゃないかなと思います。

こういう層までシーシャ文化が広がったらいいな、というのはありますか?

前田:まだシーシャにアングラなイメージを抱いている人もいるので、それを払拭するためにも著名人たちまで届いてほしいなという気持ちはあります。あとは、夫婦の共通の趣味としても良いと思うんですよね。最近は子育ての合間にお店に来てくれる方もいるんですよ。

井戸:旅行だと頻繁に行けないですけど、シーシャならちょっとした空き時間で行けますもんね。性別や年代問わず、いろんな人に気軽に来てもらえるようになったらいいですよね。

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今回は、シーシャと個性の関係性やそれぞれのシーシャのこだわりについて伺いました。

シーシャ屋で提供されるシーシャは、プレイヤーによって緻密に考えながら作られていることが伝わったのではないでしょうか。

次回で「BRO SHISHA STUDIO」とのコラボも最終回。接客で心がけていることや、シーシャプレイヤーに必要なものについて語ってもらいました。ぜひお楽しみに。

執筆:伊藤美咲 / 撮影:琴

「SWAY」 
“Sway between _____s.”
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