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哲学書のすすめ。アリストテレス『形而上学』

私は1998年に大学の哲学科に入った。
それまでは哲学書という物を読んだことがなかった。
初めて買った哲学書はたしか、カントの『純粋理性批判』だったと思う。
そして、次に買ったのはアリストテレスの『形而上学』だったと思う。
私には哲学の王道をすべて押さえたいという気持ちがあった。
『形而上学』はおそらく、西洋哲学、現代の世界の哲学に最も大きな影響を与えた書物のひとつだと思う。
アリストテレスは、古代ギリシャの哲学者で、ソクラテス、プラトンと並ぶビッグ3などと言ってもいいかもしれない。
アリストテレスはプラトンの弟子だ。
『形而上学』ではアリストテレスはそれ以前のギリシャ哲学を批判している。特にプラトンを批判している。つまりこの本を読めば、ギリシャ哲学の多くをカバーできることになる。お得な本だ。
私はこの本を読んだとき、まず、感動したのは、「目的因」という考え方だ。
自然科学では、原因は過去にあるもの、というのが当然とされている。しかし、アリストテレスは「目的因」というものを考えていて、原因は未来にあるということを考えていた。つまり「なんのために」というのが原因だと言うのだ。たしかに私たちが行動を起こすとき、その原因には「なんのために」を考えると思う。しかし、それを自然科学などにも当てはめるところがアリストテレスの古い故に現代の私たちには斬新な考え方だと思う。
そういった古い故の考え方を知ることで、人類の(特に西洋の)学問がどう発展してきたかわかる。つまり、『形而上学』を読むことは、ヨーロッパを中心にした学問の歴史がわかりやすくなる。そういう点でもこの書物を推す理由になると思う。
近代、現代の哲学を読む上でも『形而上学』を読んでおくと、理解しやすい。
ジャン・ジャック・ルソーの社会契約論のアイディアも『形而上学』から出ている。先に人がいて契約して社会ができたという考えを逆転して、先に社会があり、そこに生まれてくる赤ん坊は社会の中で生きることを契約して生まれてくる、そんなふうにルソーは考えたようだ。
また、私はサルトルを読んでいないが、高校生の頃に「実存は本質に先立つ」という言葉の意味がわからなくてずっと頭の隅に引っかかっていたが、「本質」という言葉はアリストテレスの『形而上学』に定義されていて、それを私は大学卒業後読んだときにサルトルの言葉がスッと理解できた。二千年以上の時を隔てても、影響を与える哲学書『形而上学』の力は凄いと思う。
哲学以外の学問を修めようと思っている人も、ぜひ、この本は読んでおくべきだと思う。諸学の出発点はここにあるくらいに重要な本だからだ。読まずに批判するよりは読んで批判する方が、批判も深い物ができると思う。

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