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【短編小説】就職

 先生はママと、政府は火星人と、葬儀屋は奪衣婆と、俺の知らないところでとっくにナシは付いている。
 棺の中に安置された祖父は、その身体に白装束を乗せているだけだった。
「死後硬直は、数時間後には解けるんですよ」
 葬儀屋は俺たちの誰とも目を合わせずに言った。
「関節を曲げるとポキポキ言いますけど、大丈夫ですから」
 その大丈夫は死体損壊に該当しない、と言う意味なのだろうか。
 俺は籠手の輪を左腕に通しながら考えた。
 白装束って言うのは実際には乗せるだけで、着させる訳じゃないんだな。
 何か理由でもあるのだろうか。


 記憶が正しければ1日に3,000人ほど死ぬ訳で、渡賃の六文が凡そ300円。
 そうなると1日に90万ほどになる。
 閻魔大王にショバ代を1/3の30万払うとしても残り60万近くある。
 そんな美味しい職業を放っておかれる訳が無いのだから、まぁどこかに構えた冥府極道の愛人か何かがやってる仕事なんだろう。
 そうなるとやはりその冥府極道はそこそこの収入を得ている事になる。

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