【短編小説】いままでありがとうございました(1950字)
公園の入り口に掲げられた張り紙にはそう書かれていた。芝生には誰もおらず、ブランコは揺れず、シーソーは傾いたまま、滑り台にもジャングルジムにも誰も登っていない。
公園は虚ろだった。
子どもはもちろん、ゲートボールの老人も野良猫すらいない。晴れ渡った空が逆に寒々とした印象を与えているその空間に足を踏み入れる。これで良かったんだ、と呟く。
仕事を辞めて家にいる様になると、近所の子供たちが遊ぶ声を煩わしく感じる様になった。
以前であれば土日に聞こえるその声を微笑ましく思っていたが、こうも毎日となると次第に苛立ちが先行するようになる。
彼らが将来的に国を支えるものであるとしても、それでも耐え難いと思うようになった。
役所に何度か相談をした事があったが、まともに取り合ってもらえなかった。
他の自治体では公園を取り潰すと言うニュースを見たりしたが、この自治体の方針はそうではないと言う事だ。つまり老人よりも子どもが優先されている。
あの子供たちがいずれ年金を収める時が来ると言っても、現段階までで税金を払ってきたのはこの私たちだ。それならば行政は私たちの声を聞くべきではないのだろうか。
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