【小説】ねこ
猫も大きすぎると可愛さを失う。
それは虎だとかライオンだとかのサイズでは無くて宇宙規模の大きさの猫だった。種類は分からない。そもそも宇宙サイズの猫に血統などあるのだろうか。交配なんてものをするのだろうか。あまり想像したくない。
かつて中国の山奥には巨大な竜が存在していて、その竜が目を開けている時が昼間だとか目を閉じている時は夜だとか、息を吸っている時は夏で息を吐いている時が冬だとされていたとか何だとか言うが、宇宙規模の異常気象もそれは猫の気まぐれが原因だとすると説明はつかないけど納得がいく。
「おい、お前は猫派なのにこのミッションに選ばれたんだってな」
筋肉の塊みたいな体躯のアフリカ系アメリカ人の男が俺に話しかけてきた。手の中の拳銃が小さく見えるが、実際には44口径くらいありそうだ。
前に本物のプロレスラーが歩いているのを見た事があるが、手にするもの全てがミニチュアのおもちゃに見えてしまうので笑ったら怒られてしまった。それ以降、大男を見ると別の緊張を強いられるようになった。
「あぁ、犬か猫かで言えば猫派なんだがな。世間一般で言う猫派ほどの愛情を持ってないと診断されたようだ」
「そうか。まぁ巨大とは言え好きな猫をぶっ飛ばしに行くんだ、気落ちするなよ」
「あぁ、大丈夫だ」
アフリカ系アメリカ人の大男は真っ白い歯を見せて笑うと俺の膝を叩いた。
「おたくはやっぱり犬を飼っているのか?」
俺が尋ねるとそのアフリカ系アメリカ人の大男は「いや、俺が飼い馴らしているのは自分の人生さ」と言って再び笑ったが、聖書に馴染みの無い俺にはその冗談がよくわからずに曖昧な愛想笑いを返すのが精一杯だった。
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