【小説】夢縫い
何年かぶりに部屋でゴキブリを見た。
靴を履いていた俺はそのままゴキブリを踏みつぶした。分厚いゴム底の下で潰れるゴキブリを想像したが、同時にゴキブリはほんのわずかな隙間でも入り込むほど薄いし、意外なほどに硬くなかなか潰れないと言う話を思い出した。
足を上げた瞬間に凄い勢いで逃げていきそうだな、と思ったので踏んだ足に捻りを加えた。その行為にどれほどの効果があるかはわからないがやらないよりマシに思えた。
果たして足を上げてみたが、そもそも足を置いていたところには何もいなかった。
顔を上げて辺りを見回すが誰もいない。俺が幻覚を見たのか実際にいた虫を踏み損ねたのかは分からない。誰もいないから確認を取る事もできない。
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