見出し画像

【小説】匣入り娘

 鍵を差し込んでドアを開けるとそこに匣があった。それは何かの抽象画とかだまし絵のようでもあった。
 薄い木の板か硬質な段ボールの様に見える箱だった。俺はその箱を足で突いた。
 重い。
 ぐっと力を込めて足で押してみたが動きそうにない。この匣は何なのか。宛名も送り主も書いていない箱がここにあると言う事はどういう事か。大家からの嫌がらせかと思ったが家賃は滞納していないし関係性は比較的良好だと思っている。
 合鍵を持っている人間は他に存在しない。なら誰が。
 まぁ良いか、開けてみてからにしよう。
 部屋に変な匣がある、と男が警察に通報したところで酔っ払いのたわ言と思われてお終いだ。ならば開けてみて、そこで何かあった時に初めて通報するべきだ。匣を開けた事を怒られるかも知れないがそれはその時に怒られたらよい。
 部屋の鍵を使って上蓋を固定しているテープを切り裂いた。
 

ここから先は

1,962字
この記事のみ ¥ 300
期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

サポートして頂けると食費やお風呂代などになって記事になります。特にいい事はありません。