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古着屋のパンク少女の、心の歌。

人は見かけによらぬもの、という話です。


ぼくが暮らす街には2軒の古着屋があっていずれも格安店である。一方の店には、ゆるふわの髪で優しい笑顔の似合う男の子がいて、先日ぼくは黒のビニールレザーのキラキラ感のあるハット(cloche)を買って、その場でかぶったところ、かれはぼくを褒めてくれた、「いつもお洒落っすね~」ぼくは驚き、舞い上がっちゃってこう言った、「あなたには負けるよ。」するとかれははにかんで言った、「いや、ぼくなんて。」



なお、ビニールレザーのハットをかぶったぼくは、よれよれの髪は顎のラインを越え、ブラウンのワッフルシャツに淡いピンクのパンツにサンダル姿で、首にステンレスのネックレスを2つかけ、手首にインド製のブレスレットをつけているものの、しかし、とっくに近眼かつ老眼である。



この日はもう一軒の大きな古着屋へ寄ってみた。こちらの店員はみんな揃って、底抜けに奇抜なお洒落をするツワモノ揃いである。ぼくはインド綿にインド染めのショールを買った。レジの女の子は黒を基調にしたパンクファッションの女の子で、手首には鋲つきの黒のビニールレザーのブレスレットをつけ、徹底的にダメージ加工されたボロボロのジーンズを穿いている。例によってぼくは彼女に訊いてみた、「どんな音楽、聴いてるの?」すると彼女は笑って答えた、「あたし、それ、よく訊かれるんですけど、でも、実はわたし遊助が好きなんですよ。知りません? 『ひまわり』で検索して、聴いてみてください。」



ぼくは部屋へ帰って、聴いてみた。


ぼくは椅子から転げ落ちた、あの子めちゃめちゃいい子じゃん! ぼくはうなった、Never Judge A Book by Its Cover. 人は見かけによらぬもの。てか、もしかしたら彼女は自分の大切な世界を護るためもあって、パンクファッションを好きになったのかもしれない。ファッションとはありがたいものである。



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