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映画 ダンサーインParis

ストーリーはわりとたんじゅん。ヒロインのエリーズは幼い頃からバレリーナとして訓練を重ね、才能に恵まれ、努力と幸運の結果、パリ・オペラ座に立てるようになって、バレリーナのトップを狙えるポジションにいる。ところが晴れの舞台の開幕直前にエリーズは恋人の裏切りを目撃し、心が乱れ、大事な舞台で転び、足首を捻挫(骨折?)してしまう。エリーズは、一晩で恋人もバレリーナとしてのキャリアも、ともに失ってしまう。


エリーズは人生の希望のすべてを打ち砕かれ、傷心の日々を過ごす。一度は調理助手になって料理人を目指そうとおもいもする。しかし、おもいがけずコンテンポラリーダンスカンパニーと出会って、もう一度、(今度はダンスのジャンルで)踊ることを決心する。


理学療養師の(2度も気の毒な!)青年と、クリエイティヴな料理人、はたまたロッジを若い芸術家たちに貸す親戚のおばさん(?)も、なかなかいい味を出してます。エリーズの父親(弁護士)はどうかしらん? サブプロットの〈父と娘の和解〉は、ちょっと余計だったかも。はたまたエリーズを裏切った彼氏についてはなんにも知らされません。


エリーズ自身と彼女の身体表現は全篇を通じてただただ美しい。なお、この作品において、一方で、〈クラシックバレエ:きわめて厳しい堅牢な古典的形式とともにある美〉が、他方に〈コンテンポラリー・ダンス:流れるようにスポンテイニアスな即興性に富んだ、グループで表現する芸術の創造〉が置かれ、両者は対照的に扱われます。あくまでも個人的な感想として、ぼくは冒頭のバレエのシーンをすばらしく美しいとおもったものの、他方、ストーリーの半ば以降の、やたらと元気のいい解放感に満ち溢れたコンテンポラリーダンスの群舞を、それほどエキサイティングには感じなかった。もっともそれは人それぞれの趣味の問題でしょう。



いずれにせよ、監督がこの作品に込めた主題、〈たとえ一度キャリアが崩壊しようとも、しかし悲しみを乗り越え、希望を持って立ち上がれ〉は、強く明快に感じることができました。なによりもエリーズの身体表現がすばらしかった! ついでながら若者たちのふだん服の着こなしの色感の良さにも好感が持てました。



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