Where are you from? コンビニで外国人レジ打ち担当者に訊ねてみる。
いまや日本は移民受け入れ大国世界5位である。順位はアメリカ、ドイツ、オーストラリア、カナダ、日本である。政府の方針に抗って、移民が日本を滅ぼすという警告の声も多い。ぼくも総論としてはそうおもう。ただし、それはそれとして(矛盾しているようだけれど)ぼくは移民たちにしたしみを感じることが多い。
近年東京都内のコンビニでは外国人バイトがやたらと多い。どうやら多くの国では、〈日本でコンビニバイトをするための3か月研修プログラム〉が存在するという噂も聞く。なるほど、かれらはかんたんな日本語(接客会話)ならば使いこなすことができる。
ぼくはコンビニで外国人バイトに当たったときは、レジでカネを払うついでに、笑顔でWhere are you from? と訊いてみる。相手がネパール人の場合ぼくは言う、「おぉ、ダルバートの国だね、おいしいよね。」トルコ人の場合は「地震大変だったでしょ。心配したよ、だって日本もまた地震大国だからね。」バングラデシュ人の場合は「コイ・フィッシュ、(鯉)好きなの?」。ブータン人の場合は「日本人は仏教のこと忘れてるって呆れるでしょ」などと言う。いつだったか、ぼくは Are you Chainese? と訊ねて、彼女から「わたしが中国人に見えますか!??」と叱られたこともあった。彼女は韓国少女だった。また、ときにはぼくの問いかけが無視されることもある。なるほど、そんなときの相手は中国人である。彼女を責めても仕方がない。なぜなら、近年の中国共産党は日本非難が激しいゆえ、彼女もまた社会に反日教育されたに過ぎない。
次に、かれら彼女らはぼくに訊く、「あなたはどこの国の人ですか?」ぼくは答える、日本人だよ。すると相手は少し驚く。どうやらかれらは〈日本人は全員英語をしゃべれない〉とおもっているらしい。なるほど、同様の認識を西葛西のIT系インド人たちもまた持っている。たかだか Where are you from? でこれである。いやはや、文部科学省はこの現実を正視すべきでしょう。
とっくに日本の義務教育の英語は英会話重視に大きく傾いている。また、インテリたちはこの傾向を嘆きもする。(読書力が身につかないから。)しかも、これほど英会話重視に舵を切ってなお、日本人の英語力の現実はこのありさまである。おそらくその理由は、英会話に先だって、英語に潜む英語的考え方を教えないからでもあって。英語的考え方とは、自分の考えを示し、相手もまた自分の考えを示し、お互いの意見の相違をぶつけあってときに相手を説得すべく闘いもすれば、またお互いの考えを認め合うようになりもする、そんなゲームである。まず最初に自分の考えを明快に示すことなしには、相手からひとかどの人間と見なされることはない。まず教育すべきは、英語に潜むこの前提なのだ。
もっとも、べつに英語がしゃべれなくたってどうってことない。いまでは自動翻訳の翻訳クオリティもきわめて上がったし、またぼくの友人の陽気で愛嬌あふれる鮨職人はポケトークを使って外国人客をもてなし、よろこばれている。そもそも口角を上げて笑顔を作ることだって、Wao! と両手を広げて驚きを示すことだって、首を傾げて疑問を示すことだって表現であって、べつに必ずしもすべての表現を言語に託す必要もありません。
とはいえ、ほとんどの(?)外国人に、〈日本人は全員、英語がしゃべれない〉とおもわれているのはいささか心外である。また、日本人はおおむね喜怒哀楽の表現がひかえめだし、また自分の考えを表明することにためらいがちな人が多い。日本人の服の着方もサラリーマンのスーツは没個性であることを表明しておくことがサラリーマン社会を巧く生き抜くコツであることを現わしている。ギャルちゃんたちの着こなしは、「わたしはギャルの一員♡」という表明であって。つまり、日本人の服の着方は自分がどんなグループに帰属しているかの表明である場合がほとんど。個性個性と言われるわりには現実はこんなもの。そんなこんなで外国人はぼやく、「日本人はなに考えてるかわからない!」
考えてみればぼくはお調子者で、おもっていることをなんでも言う。そんなこともあってぼくは日本社会で出世できなかったのだろう。(他にも理由はあれこれあるにせよ。)
余談ながら、ぼくが英語を使うことにためらいがなくなったのは、インドを訪ねたときからのこと。インドは国内で公用語が地域ごとに違い、公用語が21もあって、しかも細かく数えればインド内言語は800とも12000とも言われる。インド人同士であっても育ち‐母語‐が違えば、話が通じない。事実上インドの公用語は英語である。
もっとも、インド人の使う英語も多種多様であり、「サルヴィス(=サーヴィスのこと)」だの「スタルバックス(=スターバックスのこと)」だの、r の巻き舌丸出しの田吾作英語を使う人がやや多いものの、しかし、なかにはクイーンズイングリッシュを綺麗に使いこなせる人もいる。リクシャのドライヴァーのなかにはカタコト英語を自信まんまんに使うインド人も多いけれど、そんなリクシャのドライヴァーのなかにさえ、流暢な英語をしゃべって、外国人観光客を取って、それなりの収入増を実現している美青年もいる。インドはその人がどんな英語をしゃべるかによって階層化される社会でもある。少しでも高い階層に属したいならば、少しでも流暢な英語を身に着ける必要がある。そんなインドという国は少し滑稽にも見えるとはいえ。
そしてインドでぼくはおもったのだった、あ、おれが英語をしゃべってもOKだな、って。みなさんもコンビニで外国人バイトを見かけたら、レジで Where are you from? って言ってみましょう。英会話の練習にもうってつけです。
おまけ。こちらは〈日本人は英語ができないことを欧米人が英語圏の住人に紹介するYOUTEBE〉で、日本人が見るとめちゃくちゃむかつくことまちがいなし。(しかも、なんだなんだなんだ、この皮肉たっぷりに添えてある悲しみに満ちた音楽は!)日本人のぼくはおもう、英語が使える程度のことで威張るんじゃねー! イギリス人だって、みんなむちゃくちゃでわけわかんない英語をしゃべっている癖に。もっとも洋の東西を問わずYOUTEBERの「教養」なんてものはこんなもの。とはいえ、これ、たしかに日本人の現実ではありますものね。とほほほほ。