見出し画像

「フリークたちこそがchicなんだ。」ゴルティエの世界観。

コドモのように無邪気で、優しく微笑み静かにしゃべる柔和な人。自身が着る服はシンプルで、白Tシャツに白のコットンシャツにジーンズとか、トレードマークのセーラーストライプTシャツの上に黒のフェイクレザーシャツとかそんなのばかりで、ゴルティエ自身が派手な服を着ているショットはひとつもない。ゴルティエはクラブへ行ってもあくまでも観察者であって、けっしてパーティーピープルの一員ではない。またゴルティエはドラッグもやらない。


JEAN PAUL GAULTIER。もともとかれは内気な少年で、ファッション画を描くことが大好きで、ファッション画を描くことによって、ファッションデザイナーになった人。ゴルティエは脳内にかれならではの美の世界を持っていて。そこにはゴルティエ好みの、魅力的なフリークたちが棲んでいる。フリークたちの魅力を最大限に演出する服をゴルティエはデザインする。まず最初にじっさいよくぞあそこまで魅力的なフリークたちを集められたもの。もちろんモデル各社の目録のみならず、ストリップ劇場や、ミュージッククラブで踊る客たちのなかからもモデルを探したでしょう。ゴルティエは、怪しげな照明の下、フリークたちにとんでもない衣装を着せ、かれらを煌めかせ、輝かせる。SMのモティーフも活用します。ゴルティエはフリークたちが大好き。おそらくゴルティエはゲイである自分自身をもフリークとして意識しているからでしょう。


逆に言えば、ゴルティエは街中で普通の人が着るリアルクローズへの関心はもしかしたら薄いのではないかしら。もっともパーティピープルにとってのリアルクローズは、とんでも服大歓迎なのでしょうけれど。別の言い方をすれば、たとえばミケーレのような根っからの服好きの愛すべき天才的ファンタジストのデザイナーとは違って、ゴルティエはけっして服だけにおさまりきれない耽美で淫らな幻想世界を持っている。ゴルティエの感受性は、フェリーニや、ジョン・ウォーターズ、ティム・バートンらに通じていて。オペラの演出家や映画監督になっていたとしても不思議はなかった人ではないかしら。


1990年あたりにかれは最愛の彼氏をAIDSで失った。もちろんゴルティエ自身がそうなっていたとしても不思議はなかった。かれは死を見て、生に帰還した。


ゴルティエはたくさんの映画に衣装を提供した。リュック・ベンソンの『フィフス・エレメント』。グリーナウェイの『コックと泥棒とその妻と愛人』。アルモドバルの『キカ』、ジャン=ピエール・ジュネの『ロスト・チルドレン』。はたまた、宝塚の花組公演『SPEAKEASY〜風の街の悪党たち』や星組公演『プラハの春』の衣装も手がけた。そもそもゴルティエがデザイナーとして独立するにあたって、オンワード樫山との契約があった。おもいがけず、オンワード樫山は世界のファッション史に多大な貢献をしたことが伺えます。


ゴルティエブランドは1999年にエルメスに買収され、同時にゴルティエは2003年から2010年までエルメスのダイレクターを務めています。2011年にすでにゴルティエはモントリオールの美術館で、回顧展を開催しています。ゴルティエは2020年のパリコレ春夏コレクションを最後にランウェイから引退。ただし、ゴルティエブランドは、ゲストデザイナーとしてジュリアン・ドッセーナを招聘して、継続しています。

また、いかにもゴルティエらしい女性の体のボトル入り香水も、継続して販売されています。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?