
おかあさんゆび(11話と12話の間の話)②
前回の話はこちら
ユミ、仙台のとある酒蔵に到着。
ガラガラガラ。
ユミ「すいませ~ん。 今日から働かせてくださ~い。」
シーン・・・・・
ユミ「すいませ~ん。 今日から働かせてくださ~い。」
シーン・・・
ユミ「すいませ~ん。 今日から・・・。」
グエン「アナタ ダレデスカ?」
ユミ「ソウイウアナタハダレデスカ?」
グエン「ワタシ、グエンデス。 アナタハ?」
ユミ「ワタシハ、ユミデス。ココデ、ハタラケマスカ?」
グエン「ムリデス。」
ユミ「モウイッカイキキマス。 ココデ、ハタラケマスカ?」
グエン「ムリデス。」
ユミ「はぁ? もうちょっと考えてから断ってくんない? しかもあんた誰? 早いとこ偉い人呼んできてくんないかな?(殺気)」
グエン「ハ、ハ、ハイ~!!!!!」
※20メートル猛ダッシュ
加藤「あ、すいませんお待たせしました。 うちの従業員が何か失礼な対応でも・・・?」
ユミ「いやいや、ちょっと会話がかみ合わなかっただけ。ちなみにあなたは?」
加藤「私は杜氏の加藤と申します。蔵元も兼ねております。」
ユミ「なるほど。 で、そうするとあなたは杜氏加藤蔵元さんっていう人でいいのかな?」
加藤「アハハハハ。それであれば加藤です。簡単に言えば社長の加藤という感じですかね。」
ユミ「ふーん、専門用語は難しいね。 まあそれはいいとして、ここで働かせて欲しいんだけど、ダメかな?」
加藤「いきなりですね。 事前に何かを見てこちらにいらっしゃいました?」
ユミ「夢と希望を見て来ました。」
加藤「それはいいことですね。じゃあ履歴書とか、何かお持ちになりました?」
ユミ「夢と希望を持ってます。」
加藤「え~っと、分かりました。 どうやってここまで来ました?」
ユミ「タクシーの運転手さんに、『一番うまい店に連れてって』と言ったらここを紹介されました。」
加藤「はぁ・・・。 あの~、ほんとに働く気あります?」
ユミ「はい!!! 精一杯頑張ります!!!」
加藤「は、はぁ・・・。 じゃあうちも人手不足なのは事実なんで、とりあえず事務所で履歴書だけ書いてもらってもいいですか?」
ユミ「それって働けるってこと?」
加藤「まあ、一応。」
ユミ「イェェェェ~イ!!!!! やったぜ~い!!!!!」
加藤「(なんかヤバイ人と接点持っちゃったな・・・)」
加藤「え~っと、前に求人出した時のフリーペーパーに履歴書付いてたよな・・・。 あれ、どこだっけ・・・、あ、あったあった。」
加藤「じゃあこちらに記入して下さい。」
ユミ「は~い」
加藤「(うわ!! めちゃくちゃ達筆じゃん。)」
ユミ「ん? あんた今、あたしの字見て惚れただろ?」
加藤「いや、惚れはしませんけど。でも凄い達筆ですね。どこかで教えたりしてました?」
ユミ「教えるほどのものでもないよ。それにあたしはもともと背中で教えるタイプだし、わざわざ指導とか一番苦手だね。」
加藤「はぁ。それにしても凄いですね・・・、これは・・・由利さんと呼べばいいですか?」
ユミ「あ、ユミでいいよ。由利と真美を合体させてユミね。あとさ、住所って前のところでいい?今住むとこ決まってないから。」
加藤「住所決まってない・・・ですか。じゃあ一応前の住所を(住所不定・無職の人、初めて会ったな・・・)」
ユミ「はい、完璧!! これでいい?」
加藤「はい、ありがとうございます。 で、ですね、ほんとに今日から働くつもりだったんですか?」
ユミ「そうだけど? 今までもこんな感じで働いてきたからね。まあ普通は違う感じなのは何となく分かるけどさ、やったことないやり方だと時間掛かりそうだったから。何かまずかった?」
加藤「まずいと言えば・・・、まあそうですね。ただ、やる気があるのは非常に伝わってるんですけど、何でうちで日本酒を造りたいと思ったんでしょう?」
※ドイツから帰国するまでの流れ、日高の居酒屋の大将の話、さらに自分の酒好きの話も交えて説明
加藤「そうでしたか・・・。分かりました。では頑張ってもらえるなら、うちで働いてもらいたいんですが、そんなにお給料も出せませんけど大丈夫ですか?」
ユミ「あぁ、お金は大丈夫。でも飲み放題付けてくれる?」
加藤「いや~、仕事柄飲むことにはなりますけど、飲み放題とはニュアンス少し違いますね。」
ユミ「ちぇっ、仕方ないな。けど大丈夫。こっそり飲むからさ。」
加藤「まぁほどほどなら・・・。あと一つ確認したいんですけど。」
ユミ「何? 何でも聞いてごらんよ。」
加藤「う~ん、住む場所。どうするおつもりですか?」
ユミ「え? ここいいじゃん。広さもちょうどいいし、あたし寝袋持ってきたから。」
加藤「事務所ですか? それはちょっと困るなぁ。 あの~、こだわりなければ、うちのベトナム人研修生が住んでるアパートが1部屋空いてるけど。興味あります?」
ユミ「い~じゃん。そういうの、早く言ってよ~。」
加藤「じゃあ諸経費はここに書類があるのでそれを見てもらって。給与天引きでも大丈夫ですか?」
ユミ「モチのロンだよ。 じゃ、あと質問ない?」
加藤「そうですね。今のところは。では由利さん・・・じゃなくてユミさんですね。よろしくお願いします。」
ユミ「オッケー。さぁ頑張るよ~。」
つづく
いいなと思ったら応援しよう!
