SHOWBOY初演初日公演を観てから1年後に書いたSHOW BOYの感想

観劇から今日でちょうど1年経つのに、いまだにSHOWBOYが観たいと毎日のように言っている。むしろ月日が経てば経つほどより良いものになっていくというか、疲れた時にふと思い出すとまた頑張ろうと思える。記憶がさらに薄れてしまわないうちにせめてSHOWBOYを観て感じたこと、考えたことをまとめておきたい。そして、これを読んだ人がSHOWBOYを思い出して「確かにこんな捉え方もできるかもな」と少しでも共感してくれたら嬉しい。

そもそもなぜ申し込んだのかもよく覚えていないくらいだけれど、たしかふぉ〜ゆ〜という舞台で活躍するすごい人たちがいるという噂を時々耳にしていて、軽い気持ちで家族と申込み、行くことになったはず。行きの電車の中でぼんやりとあらすじだけ読んで劇場に入った。座席が3列目とすごく近かったこともあり、4人が登場した瞬間のキラキラ感と迫力は今でもはっきり覚えている。オムニバス形式で伏線が華麗に回収されていき、どんどん作品の中にのまれていった。これぞエンターテイメントといわんばかりの華やかさがあり、軽快な歌にダンス、次は何が起こるんだろうと観ているだけで楽しくてわくわくした気持ちになれた。
そして楽しくて面白いだけじゃなく、ユーモアを交えて人生における大事なことも教えてくれた。例えば、作中でよく耳にした「Show Must Go On(ヤルシカナイネ)」。Show Must Go Onと聞くとSHOWに携わる演者に向けた言葉のように聞こえる。少なくとも自分はそう思っていた。けど、SHOWBOYでこの言葉は決してそうではないと気づいた。これは誰しもの人生に向けた言葉だ。「Show Must Go On」と「ヤルシカナイネ」がイコールの意味で劇中で用いられていることもそれを裏付けていると感じる。人生こそがSHOWであり、自分はその主役である。SHOWを創り上げているのは自分自身だ。

人生は、SHOWBOYのように「伏線の回収」なんじゃないかと思う。スティーブ・ジョブズの有名な「点と点は繋がる」というスピーチに似ているなと思う。彼の言う点とは今の時点のこと。点のつながりを予測することはできないけど、あの時あの選択をしたことがあの経験に繋がって、それが今の自分を創り上げているんだという風に、後から振り返った時に初めて自分が築いてきた点と点が繋がっていると気づくことができるということ。実際、S HOWBOYという作品も年中無休という舞台があったからこそできたのだと聞いた。今は無関係と思っていても後々、あの経験があったから今のこの環境があるのだと気づく日が来るかもしれない。つまり自分は今、将来の自分によって回収される伏線を新たに張り続けて生きている。この伏線が回収される日がくることを信じて、全てをかけて今この瞬間を生きていれば、自分の一生に無駄な時間なんてないと思えるだろう。

それでも人は誰でも、過去を振り返ると、あの時別の道を選んでいたらと後悔することがある。確かに別の道を選んでいたらもっと良いことが起きていたかもしれない。例えば私の好きな映画、LA LA LANDでもミアとセバスチャンが一緒になるという現実とは異なるシナリオが幻想のように描かれていて考えさせられる。それでも、その選択をしなかった現実の中で人生は続いていく。いくら過去を後悔していようと、どんなことがあろうと時間は止まらない。Show Must Go On. SHOWは始まったら止められないし、過去を書き換えることはできない。今この瞬間を生きるしかできることはない。
実際、作品の中でギャンブラーは少女に人生って変えられるの変えられないのと答えを迫られる。ギャンブラーは歯切れの悪い答えでごまかす。ギャンブラー自身答えがわからなかったのかもしれないし、変えられないと思っているが少女の手前、そうは言わなかっただけかもしれない。でも少女に人生は変えられるって教えてよと頼まれ、お金を手にするためという動機ではあったけれど、ギャンブラーは実際マジシャンがステージに上がることに貢献するし、最後には「今ならなんでもできる気がする!」とSHOWに参加することになる。ギャンブラーは船上でのSHOWを全力で楽しんでいて、その瞬間を全力で生きていた。あの時の何もかも忘れて楽しそうに踊るギャンブラーの笑顔は今でも脳裏に焼き付いている。ギャンブラーの人生が変わったのかはわからない。ギャンブルでお金を失った過去は変わらないし、これからも結局ギャンブルを繰り返す人生を送り続けるかもしれない。はたまたこのSHOWをきっかけにSHOWの道に目覚めてこれまでと全く違う道に進む可能性だってなくはない。結局、人生を変えられるか変えられないか、選択しているのは自分自身だ。

しかしもちろん自分の意思だけではどうにもならない外部環境によって人生変えたくても変えられないこともある。例えば、けがと身内の不幸でキャバレーを切り盛りすることになった裏方はダンサーから踊って欲しいと衣装を渡された際、未練はありつつも、自分は裏方の仕事を全うしているからそれでいいと衣装を受け取らず、裏方としての道を選ぶ。確かにこの状況で裏方が選べたのはこの道だけだったかもしれない。でも自身が置かれた環境の中で下したこの選択も、自分自身で行う自分にしかできない人生の選択だ。こんな風に人は小さいものから大きいものまで意識的であれ無意識的であれ人生において様々な選択をしている。その選択が正解か不正解かなんて誰にもわからない。
でもSHOWBOYは、あなたがした選択はあなたの人生だけに存在するあなたにしか創れないSHOWの一部なんだよと教えてくれているように感じる。だってその選択によって生み出された人生が、その人のその人らしいその人だけのSHOWであって、それは誰にも否定できないから。人生の主役は自分なんだから人生を変えるか変えないか決めるのは自分だし、別に人生を変えなくったっていいのかもしれない。どの選択をするか迷うことはたくさんあるけれど、結局どんな選択をしようとどれもあなただけの素敵な人生だよとSHOWBOYは元気付けてくれる。「一歩踏み出せば人生は変わる。だから勇気を持って一歩踏み出してみよう」みたいな作品ってよくあるけどSHOWBOYはそうじゃなくてあなたの人生はあなたが主役、人生を変えようと一歩踏み出すもあり、踏み出さないもあり、人生を変えないもあり。どんな人生であろうとあなたが主役のあなただけの素敵な人生。でも、一度始まったあなたの人生はもう止まらない。だから一度きりのこの人生、せっかくだからもったいないことしちゃおうよとSHOWBOYは言っていると思う。

でも、自分のSHOWは自分だけで完成しているわけじゃない。主役は自分だけどステージにいるのは主役だけじゃない。ギャンブラーがマジシャンをステージに上げることに貢献したように人は誰か他の人の人生に影響を与えている。楽しそうに踊るギャンブラーの笑顔をいまだに自分が覚えているように、SHOWを観ていた誰かの人生に大きな影響を与えていることだって大いにあり得る。SHOWBOATの船内で偶然出会った人たちの一夜をとってみただけでも、あれだけ互いの人生は作用し合っていた。Nobody’s perfectだけど、だからこそ、いろんな人の人生が混ざり合って面白い人生になる。
SHOWBOYを見終わった瞬間は本当に満足感に溢れていた。この感情をどう表したらいいのかわからずとにかく強く拍手した。これほど濃密な約2時間は他にあっただろうか。なぜだかわからないけど映画みたいだと思った。たぶん終わり方が銃を撃ちSHOWBOYという文字が輝くという映画っぽいラストだったのと、こんなにも素晴らしい作品がこの舞台を観に来た人たちにしか観られていない、日本でしか上演されていないという事実が信じられなかったからかもしれない。「あの映画面白かったよ!今度観てみて!」といった感じで気軽に人に勧めたい。もっと世界中のたくさんの人にこの作品に触れて欲しいと思う。この1年間、SHOWBOYという作品に出会えたことで、前よりも前向きに自分らしく生きられるようになったと感じるし、これからもSHOWBOYを思い返しては勇気づけられると思う。またSHOWBOATに乗船できる日を楽しみに、人生というSHOWを続けていこう。Show Must Go on!


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