世界は君に、食べることの喜びを教えた。休むことの大切さを教えた。笑いあうことの幸せさを教えた。でもまだ、「愛」を教えて貰った覚えはない。

 家族に愛されて育てた覚えはないけれど、何となく人並みに、ふつうに、生きてきた。だから人並みに、ふつうに彼氏ができて、ふつうに結婚して、子どもを育てて死んでゆくんだと勝手に思ってた。

 徹夜明けに朝日を浴びた時のように頭がぼおっとしていた。君の瞳を見た瞬間、ふつうなんて考えられなかった。画面を通して見る顔は、少し童顔で、オシャレな雰囲気と服装に包まれた無邪気で天才の子どもがそこにいた。目からは光も闇も感じた。

 世間では「リアコ」、所謂、芸能人などに「リアルに恋をしてしまった」時のことを言うらしい。私は、ある無名のバンドのボーカルに恋をしてしまったらしかった。月を眺めて私は胸が苦しくなった。

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