思い出したくない
陸上部だった。
走るのは苦手だった。早くなりたくて陸上を始めた。
大会ではいつもビリだった。
どの1年生よりも出来なかった。
短距離も長距離も幅跳びも高跳びも。
何一つできなかった。
部活がきっかけで、自分の体型がコンプレックスになった。
外見を気にするようになった。
顔も嫌いになった。
周りに妬み嫉みを感じた。
そんな自分の性格も嫌いになった。
顧問も嫌いだった。名前を呼ばれるのも、顔を見るのも声を聞くのも、姿を見るのも、存在を思い出すことも、全てに吐き気がした。
友達も嫌いだった。
どうせみんな優越感に浸ってると思った。自分にはまだ下がいると安心してるに違いないと思った。私は1番下だった。走りも体型も顔も性格も。
家族も嫌いになった。
死にたいと言っても、どれだけ学校を休んでも心配のひとつ無かった。
私なんて生まれてこなければよかった。
私を産んだ親が嫌いだ。
自分が自分のことを一番嫌いだ。
きっと私は人間じゃない。