一気に読んじゃいました:読書録「2050年のジャーナリスト」
・2050年のジャーナリスト
著者:下山進
出版:毎日新聞出版
無茶苦茶面白かった「2050年のメディア」の続編…と言うか、補完と言うか。
作者自身は「燃えよ剣」に対する「新撰組血風録」…って説明されてますw。
<2019年の 12月に当時サンデー毎日の編集長だった隈元浩彦さんと、同編集部の向井徹さんが訪ねてこられ、同誌上での連載を依頼された時に、「『燃えよ剣』に対する『新選組血風録』のようなものなら」とお答えしたのは、そうした通史からこぼれた人や話を書けるからと思ったからだった。>
メディアの未来に対する作者自身の考えは前作から変わっていません。
朝日新聞社内向けに行った講演の要約がよく整理されています。
<2019年 12月に朝日新聞社で私は「 2050年の朝日新聞」と題した社内向け講演をしていますが、そのとき、私は朝日の皆さんにこんなことを提案しています。
1、どんなニュース、記事が掲載されている有料デジタル版を人はとり続けるかをとことん考える。
2、 1のために、社の資源を集中配分する。無料広告モデルのニュースサイトは、思い切って整理統合する。
3、有料デジタル版の記事の方向を、強い編集権をもって導く編集者を外部から招聘する。
4、記者は、無料ニュースと同じ話題を同じようにやっても駄目だということを自覚する。>
ただネット戦略における日経・讀賣・Yahooのせめぎ合いを描いた前作から、色々なコトが起き、状況も変化しています。
そこら辺を<メディアの未来>と言う観点から考える点で、「サンデー毎日」の連載(今も続いているようです)をまとめた本書は役に立ちますね。
本筋で言えば「ますます厳しくなっている新聞・テレビ・雑誌等のメディア経営」。
「不動産があるから〜」なんてのが意味なかったのは、最近の決算やリストラ状況に露わです。
時事的には「オリンピック」「コロナ」。
「オリンピック」についてはメディアのスタンスに相当厳しいですが、「コロナ」についての言及が少ないのは「よく分からないコトがまだ多い」ってコトが分かってるからでしょうか。
医学系の知識が相当ある作者ですから。(そのラインの話も多いです)
個人的趣味としては「萩尾望都」「竹宮惠子」に触れた記事も興味深かったです。
第三者的には、こう言う見方が公平かなぁ…と。
ストレートニュース(速報、前のり)は無料提供
分析・解説・深掘り記事は有料メディアへ
この枠組みは然るべきと思うし、ジャーナリストの未来は後者にあるってのも分かります。
ただ変化の速さに、果たして新しいプラットフォームの構築やジャーナリストのあり方の変化が間に合うのか。
なんかNewspicks も今ひとつだからなぁ…(ビジネス書ビジネスは、どうかと)。
でもジャーナリズム/ジャーナリストが社会にとって重要な意味を持っている…ってことはウクライナ情勢においても改めて痛感させられてるところです。
新しい流れは必ずやって来る。
…そう思いたいです。