個人的にはあまり図書館は使わないんですが、図書館の社会的な機能には興味があるんですよ:読書録「私たちが図書館について知っている二、三の事柄」
・私たちが図書館について知っている二、三の事柄
著者:中村文孝、小田光雄
出版:論創社
新聞の書評欄で取り上げられているのを読んで、
「ちょっと面白そう」
と購入してみた本。
僕個人は図書館はあまり使わない方なんですが、「図書館」と言うものが社会的にどう言う機能を果たすのか/果たしていくのか…って言う点にはなぜか興味があるんですよね。
金沢の図書館がハコモノとして面白かった…ってのもあるかもしれません。
作者のお二人はコンビで色々な対談なんかをされてるようで、「出版業界」を特に「流通」を絡めた視点から論じることが多いようです。
単なる「書籍論」「書店論」「図書館論」にとどまらず、「出版業界」と言う生態系を<流通>と言う動態を絡めつつ語るって感じでしょうか。
そういう過去のお仕事を前提として本書も成立しているので、正直言ってお二人の「立ち位置」や「基本的考え」が掴みきれず、本書の内容を理解できたとは思えない読後感があります。
…なんですが、読んでる間は、無茶苦茶面白かったんですよね〜。
業界に通じた人が、プロ的な視点でその歴史的な流れをフォローしつつ、今に至る課題を浮き彫りにしていく…ってのが面白かったのかなぁ。
読み終えて、
「う〜ん、よう分からんかった」
と思いつつ、結構満足感があるのが不思議ですw。
総括としてはこの発言が<まとめ>かな、とは思います。
<中村 今までの話から判断すれば、1980年代以降、TRCの参入によって図書館はマーク化され、書店と変わらない新刊をメインとする現代図書館流通システムを確立し、ロードサイドビジネスと同様の大駐車場を備え、全国的に増殖していった。その一方で書店は半減し、2010年代には図書館貸出冊数と書籍販売冊数が逆転してしまい、20年にはその差が1億冊以上に及んでしまった。少なくともTRCによる図書館運営方式、すなわち住民サービス向上の名のもとに新刊中心に選書するようになったことが地域の書店を減少させたことは確かだ。>
じゃあ、「図書館バンザイ」か、というと、デジタル化の流れや、ハコモノとしての図書館の老朽化がその衰退に拍車をかけ、出版業界全体が衰退に…といった流れ。
こういう課題認識と共に、実態として「書店競合」する存在になりながら、イデオロギー的に「図書館」を整域化(カルト化?)していくような流れが一方にあったりするところなんかが「歴史」を語る中にあって、ここら辺も興味深かったです。
…と言うか、こっちの話をもっと聞きたかったw。
石井桃子さんや「子ども図書館」の位置付け、「悪書運動」の評価等、興味深そうな話がたくさんありそうです。
そこら辺が「前提知識」となっちゃってて、解説されないあたりが、分かりにくさにも通じてるとも言えますかね。
僕自身はかなり前に電子書籍が中心の読書生活になってますし、今はオーディオブックにも足を踏み込んでいます。
そう言う意味じゃ、「読書」と言う視点から「図書館」と接点を持つことは当面はないのかな〜と思います。
でもそうじゃない役割を「図書館」が持つこともあってもいいんじゃないかな、と言うのが僕の漠然とした想い。
「町の書店」が潰れて無くなっちゃう前に、そこらへんの切り分けをしていく方がいいんじゃないかな〜と、読み終えて考えています。
バク〜っとだけどw。
#読書感想文
#私たちが図書館について知っている二三の事柄
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