「テクストを読む」ってのは、こういうことかなぁ:読書録「謎解き サリンジャー」
・謎解きサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか
著者;竹内康浩、朴舜起
出版:新潮新書(Kindle版)
なんか「帯」が煽ってますが、結構評判になった本です。
ちょっと気になってたんですが、BRUTUSの「村上春樹」特集を読んだ流れで、読んでみようかなぁ…と。
いや、BRUTUSに出て来る訳じゃないんですけどねw。
「グラス・サーガ」と言われる「ナインストーリーズ」等の短編集は、僕は全部は読んでない…と思いますw。
いや、いろんな訳でポロポロ摘み読みしたようなところがあって、もしかしたら全部読んでるかもしんないなぁ、と。
でもまあ、「ナインストーリーズ」の冒頭の作品。
「バナナフィッシュ日和」(バナナフィッシュにはうってつけの日)
これはハッキリと覚えています。
なんせ、ラストが衝撃的。
で、この「衝撃的ラスト」から謎解きが始まり、「グラスサーガ」を巡ってあれやこれや考えが巡らされ、「ライ麦畑でつかまえて」に至る。
…というのが本書の流れです。
「バナナフィッシュ日和」のラストは「シーモア」(グラス家の長男)の突然の拳銃自殺で締められます。
…いや、あれは本当に「自殺」だったのか?
死んだのは本当に「シーモア」だったのか?
…ってのが「謎解き」のスタート地点です。
そう聞くと、なんか「魅惑的」ですわなぁ。
で、実際読んでみると、これはこれで個人的には面白く読めたんです。
なんだけど、「エンタメ」的な面白さかって言われると、「…」かな。
一時期よく言われた「テクストを読む」という視点からの<謎解き>とでも言えばいいのか、純文学的「新本格派」のトリッキーの極北(何言ってんだかw)とでも言えばいいのか。
ぶっちゃけ、推理小説的な「犯人は誰だ」ってとこには行きません。
<答えは、サリンジャーの異常なほどの面倒くささにあったのではないか。
小説など娯楽なのだから読んで面白いかどうかが勝負なのだ、というタイプの人は、その面倒くささに付き合うことはしない。>
それなりに興味深く読みつつも、最後に思い至ったの、
「所詮、僕は<小説など娯楽なのだから読んで面白いかどうかが勝負なのだ>っちゅうタイプの人間なんやな」
という結論です。
こんなめんどくさいのに付き合っていくのは、ちょっと無理っす。
しかしまあ、サリンジャーってここまで「禅」や「俳句」にはまり込んでたんですね。
なんかそれも不思議な感じがしました。