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謎が全て解かれなくても、日々は続く:読書録「図書館のお夜食」

・図書館のお夜食
著者:原田ひ香 ナレーター:坂内愛
出版:ポプラ社(audible版)

気楽で気分が軽くなるような本が聴きたいなと思っていたので、Audibleの新作リストに上がっていたこの作品をピックアップ。
作者の原田ひ香さんは名前だけは聞いていましたが、作品は読んだことないと思います。


サマリー
「三千円の使いかた」 「ランチ酒」 の原田ひ香が描く、本×ご飯×仕事を味わう、 心に染みる長編小説。
東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある 「夜の図書館」で働くことになる。 そこは普通の図書館と異なり、開館時間が夕方7時〜12時までで、そして亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。 乙葉は 「夜の図書館」で予想外の事件に遭遇しながら、 「働くこと」 について考えていく。
すべてをさらけださなくてもいい。
ちょうどよい距離感で、
美味しいご飯を食べながら、
語り合いたい夜がある。

(audibleより)


事件と言えば、
流行作家が過去の友人の作家の蔵書を見るために、押し掛けてきたのと、
主人公が好きな覆面作家の突然の死後、妹が蔵書処分しようとする話、
それから図書館の中に、いつの間にか図書館の所有じゃない本が残されている
…この3つがメインになりますかね。
それらの顛末が語られつつも、図書館に関わる人たちの過去や想いみたいなものがインサートされて、区切り区切りで、図書館のカフェのまかない飯が登場する。
現在、進行形の物語は3つの事件で追いかけられるんだけど、作品として語りたいのは、むしろ図書館に関わる人たちのアレやコレや…っていう感じでしょうかね。
最終的には図書館のオーナーの話が語られることになります。


ネットの感想文なんかを読むと、「絶対に続編を…」って言う意見が多いようですけど、作者は現時点ではあまりそのつもりは無い様子。
確かに、2番目の事件の話なんか覆面作家の謎は明かされないままだし、登場人物たちの今後にも含みがあったりもします。
休業した図書館が再び開業するかどうかもはっきりとしませんし。


でも、作者が考えるように、それはそれとして、この作品はこれで1つの完結を迎えているとも言えると思います。
誰かが抱える謎や想いみたいなものは明らかにならないままに、それでも毎日は進んでいく。
考えてみれば、それは当たり前のことだし、そういうものだとも言えるじゃないですか。


この不思議な図書館がまた開業するようになって、登場人物たちは以前と同じような毎日を過ごしていく。
そうあればいいなぁとは思います。
でもそうやって過ごしていく中でも、何かは少しずつ変わっていって、ここにある「今」は、いずれは過ぎ去っていってしまう。
この作品自体がそういうことを思わせる内容になってるとも思うんですよ。


いい話なんじゃないかなぁ。
僕はこういうの好きです。
原田さんの他の作品も機会があったら読んでみようかなと思っているところです。
…聴いてみようかな、かなw。


#読書感想文
#図書館のお夜食
#原田ひ香
#audible

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