もうちょい「背景」が知りたい:映画評「ノー・タイム・トゥ・ダイ」
ダニエル・クレイグ版「007/ジェームズ・ボンド」最終作。
僕はダニエル・クレイグ版は結構どれも好きなんですが、振り返ってみるとヤッパリ「スカイフォール」の出来が飛び抜けてるかな、と。
まあ、Mを退場させるという裏技を使って、シリーズとしては違う次元に踏み込んだってのもありますが。
本作に関しては、「シリーズ」の締めとしてはナカナカ感慨深いものがあります。
「カジノ・ロワイアル」で「007に<なる>物語」を描き、<007>は他の人に受け継ぎながらも、<ジェームズ・ボンド>としての物語は決着させるという構図。
さらには<ジェームズ・ボンド>シリーズとして、設定としては「<007/ジェームズ・ボンド>を受け継いで来た/受け継いでいく」となってはいないものの、「メタ的」にはそういう枠組みも想起させるというのは、かなり踏み込んだ内容と言えるでしょう。
ここら辺、マーベル映画がかなり踏み込んでる印象がありますが、本作も「名門シリーズ」としては相当に大胆だと思います。
一方、単体の映画としては、
「いや、もうちょっと背景を説明してくれないと…」
ってな印象があります。
因縁のブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)との決着がつき、新たな敵としてサフィン(ラミ・マレック)が立ちはだかる
…って忙しすぎw。
まあ、スペクター(ミスター・ホワイト)に家族を殺されたサフィンがスペクターに復讐を…ってのは分かるんですが、妙な「日本趣味」とか、どんな背景があるのやら、さらにはマドレーヌ(レア・セドゥ)との関係はどこまで深いものがあったのか
…とか、もうちょっと説明してほしい!
というか、これ、ブロフェルドが引き続きの「悪役」でも良かったんちゃう?
なんか、その方がボンドの「因縁話」としてもスッキリしたような…。
とまあ、相反する感想を持ってはいるんですが、総論としては「良かったんじゃない?」ってのが評価です。
アクションも楽しめましたし。
しかし、ダニエル・クレイグ。ロマンスはハマりませんな。
本作は「ジェームズ・ボンド」としてはかなり真剣な「愛の物語」になってるんですが、そこんところにあんまりロマンチックさを感じられないというか、なんというか。
まあ、不器用な男の真面目な愛の物語…と考えれば、それはそれで収まるんですけどね。
個人的には色気沙汰の全くなかった「現・007」(ラシャーナ・リンチ)と新人エージェントの「パロマ」(アナ・デ・アルマス)はかなり良かったです。
さて、次の「ジェームズ・ボンド」はどうなるんですかねぇ。
シリーズの継続が表明されてるのは嬉しいこと。
しかし「ダニエル・クレイグ」版でハードルが上がってるのも確か。
そこが懸念でもあり、でもこの製作陣ではやってくれるという期待もあり…。
ま、待つしかないか。