見出し画像

ツールは結構揃ってる。あとはどう実装・実践していくか…と言うことかな?:読書録「オードリー・タンが語るデジタル民主主義 」

・オードリー・タンが語るデジタル民主主義  
著者:大野和基 [インタビュー・編]
出版社: NHK出版新書  (Kindle版)

オードリー・タンさんについては、コロナ禍での台湾の政策が先進的であると言うことで、当時結構記事を読みたし、書籍も読ませてもらいました。
なんでまぁ大体何をやってたかわかったかなぁって気持ちでいたんですけれども、今回東京都知事選で安野貴博さんが出馬するにあたって「デジタル民主主義」の実現を掲げ、その先達としてオードリー・タンの名を上げたことで、もう一度確認してみようと思って読んでみることにしました。


本書が書かれたのは、22年オミクロン株が広がる前の段階と言うことになります。
したがってまだコロナ対応に関しての記述が多くあるんですが、それ以上にオードリー・タンさんがコロナが広がる前から実施していた「デジタル民主主義」的な取り組みについて解説をしてくれています。
コロナ対策で活用されたデジタルツールだって、実際にはその前から実装されていたものを手を入れながら活用していったって言う側面があります。
考えてみればコロナの時に読んだ記事の中にも書かれてあったことなんですけど、すっかりそれがコロナ対策で上書きされちゃってたって感じですね。
僕もまぁちょっと偏っちゃってたって言うことでしょう。


なぜ台湾でこのような形でデジタル民主主義が広がったのか、
いろいろ契機はあるようですけれども、根本的には台湾そのものが民主主義に対してまだ若々しい情熱を持っていると言うことなんじゃないかと思います。
独裁性が終わり、民主主義が導入されたのが1989年ですからね。
ここら辺、韓国にも似ています。
そのため、民主主義に対する情熱がある種の暴力的な反動にもなっちゃうところが韓国にはあるんですけど、中国との対立がビビットである台湾の方がまだしも、その危機感から実務的なところに落とし込むことができているって言う感じなんでしょうか。

読んでみて「デジタル民主主義」のツールとしての道具は結構もう揃ってる来てと言う感じがします。
むしろ必要なのはそのツールをうまく機能させる仕組みや行政の方針の方ですね。
本書ではネットを使って国民の意見を取り上げる仕組みについて解説がされていますが(Join)、
その国民の声をどうやって議論の俎上に乗せるのか、
その議論の過程を透明化しながら、どうやって実現に持っていくのか
ここら辺はデジタルだけでできることではありません。(もちろんデジタルでサポートはしてますが)
その点の仕組みも含めてしっかりと組み上げているところが、台湾のデジタル民主主義の先行点だと言うことになるのかもしれません。


だからこそ安野さんは東京都議選に出馬されたって言うことでしょうね。
ツールはできてる。
じゃあその仕組みを、そのツールを政治・行政の中にどうやって組み込んでいくのか。
それを首長のリーダーシップによってやっていく。
安野さんの考えているのはそういうことだと思います。

面白かったのはオードリーさん、ネット投票に関してはネガティブな意見をお持ちだと言うこと。
政策に関して、その実行のためにデジタル投票を行うみたいなに対してはポジティブなんですけど、議員や首長を選ぶ選挙でデジタル化するメリットはあまりなく、むしろデメリットの方が多いというのがオードリーさんの考え方のようです
これは結構納得感のある主張でした。
投票周りのことをデジタルで効率化していくと言う事はあるでしょうが(立会人がずっと投票所に同席してなきゃいけないなんていうのは代替できるはずです)、デジタル投票にスライドしていくって言うのには、やはりなりすまし等のリスクを看過できないでしょう。
投票が民主義の根幹である以上、このリスクを許容すると言うのは大きなマイナスだっていうのは確かにその通りだと思います。


結局今回安野さんは東京都知事選には落選しました。
まぁ当然だと思いますし、それは安野さん自身にもわかっていたことでしょう。
ただその中でデジタル民主主義に向かういくつかのツールは披露されています。
そして、そのツールはこれから広くオープンになっていく予定です。
そのことによって「デジタル民主主義」が日本においても推進されていくのではないか。
安野さんはそれを期待していると思いますし、僕もそれは強く期待したいところです。


大阪でやってくれませんかね
意外に大阪維新とは親和性があると思うんですけどね「デジタル民主主義」。
大阪維新の会って主義・主張よりも手続きとかステップとかを重視するところがありますから。
そこをデジタルの力でオープン化していくっていうのは意外にはまるんじゃないかな?
各議員の発言や行動への牽制妨害にもなりますしw。
そう言うと、怒る人は結構いそうですけど…

#読書感想文
#オードリータンが語るデジタル民主主義
#安野貴博

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集