クソ女/最低母親が音楽で変わる…だけじゃなくて、彼女は周りも変えていく:映画評「フローラとマックス」
Apple TV配信のジョン・カーニー監督作品。
「はじまりのうた」とか「シング・ストリート」とかに連なる、ジョン・カーニーの音楽映画です。
「ハート・ビート・ラウド」を観たときに、
「ジョン・カーニーだったら…」って思ったんですが、まさにその路線w。
アイルランドのダブリンに住むシングルマザー・フローラは反抗的な少年である息子マックスとの関係に悩んでおり、警察の勧めで彼に趣味を見つけることにする。
彼女は捨てられた古いギターを拾い、息子にプレゼントするが、マックスは見向きもしない。
ふとしたキッカケでフローラは自分でギターを弾くことにして、ロサンゼルスを拠点とするギター教師ジェフのオンライン授業を受講することにする。
やがて音楽の魅力に気づいた彼女は自分自身も、そしてマックスや、ジェフさえも変えていくことになる…。
冒頭からのこのフローラのクズ女/ダメ母親っぷりがぶっ飛んでて、クラブに入り浸り、行きずりの男と一夜を共にし、オンライン授業そっちのけでジェフにアプローチをかけ…
と、呆れる展開。
U2のボノの娘イヴ・ヒューソンが活き活きと(w)演じてくれます。
その彼女が音楽の魅力の捉えられて物語は展開し始めるんですが(きっかけはジョニ・ミッチェルのBoth Sides Now)、マックスと音楽を通じて心を通い合わせ、ジェフと運命的な恋愛に…ってなパターン的展開に収まりきらないところが、ジョン・カーニー。
フローラはある種の音楽的才能を持っているんですよね。(プロデューサー的と言ってもいいかも)
その創造性が彼女自身を変えるだけでなく、息子のマックスや、元・夫のイアンにも影響を与え、彼女に音楽の素晴らしさを教えたLAのジェフさえも変えていきます。
それも、
「音楽的才能に目覚め、素晴らしい曲を作って、大ヒットさせて、大成功する!」
…みたいなんじゃなくて、その才能や創造性が彼らの人生を少しだけ変えて、ハッピーにする…みたいな。
観終わって、すごく気分が良くなりました。
ラストのライブのシーンでは、タブレットを持って、リビングで踊りまくっちゃったくらいw。(もちろん家族はいませんでした)
さて、このあとフローラとジェフはどうなったのかな?
…なんてことを言うのは野暮なんでしょうね。
そういうところを描いちゃうと、途端に陳腐になってしまうような気がする。
「そう言うこともあるかもね〜」
くらいがちょうどいいんでしょう。
この塩梅がジョン・カーニーだなぁ。