<彼ら>を知るためじゃなくて、<自分>の世界観の解像度を上げるために知りたい:読書録「世界と私のA to Z」
・世界と私のA to Z
著者:竹田ダニエル
出版:講談社(Kindle版)
「Everything Everywhere All at Once」を観たときに、自分たちの世代のミッシェル・ヨーたちの視点に立ちつつも、その娘が「絶望」と「虚無」にとらわれ「混乱」している姿がすごく気になりました。
自分の息子たちの世代である彼女の背景を知りたいな…と思って読んだ作品。
竹田ダニエルさんが91年生まれで、「エブエブ」の監督へのインタビューなんかもされています。(それでこの本を知ったんですけどw)
アメリカの<Z世代>の現状について、現地から紹介した本…ですね。これは。
<「Z世代」とは、一般的には1990年代後半から2010年頃までの間に生まれた世代を指す。>
91年生まれの作者はその少し上の世代。
「エブエブ」の娘は<Z世代>の走りくらいの年代ってことになるんでしょうか。
僕の子供たちは<ドンピシャ>ですね。(まあ、アメリカとは事情が違うところも多いけど)
本書では12章を立てて、いろいろな側面から<Z世代>の感覚や考え方を紹介してくれています。
第1章 私にとってのセルフケア・セルフラブ
第2章 私にとっての応援のものさし
第3章 私にとってのオリヴィア・ロドリゴ現象
第4章 私にとってのSNSと人種問題
第5章 私にとってのAsian Pride
第6章 私にとっての仕事の意味
第7章 私にとってのスピリチュアリティ
第8章 私にとってのライブ体験
第9章 私にとっての美学とSNSの関係
第10章 私にとってのファッショントレンド
第11章 私にとっての恋愛カルチャー
第12章 私にとっての世代論
まあ「世代」って(作者も言ってるけど)一括りにできるもんでもなくて、その中でも色々な考え方、感じ方、スタンスがあるのが実際のところ。
「新人類」とか言われた僕らが自分たちを振り返ってみても、そんなことは当たり前。
ただ同時に「その年齢の時に」「どういう時代の制約に影響されたか」ってのはあって、その影響のされ方に違いはあって、その制約条件には「時代性」「世代観」が出てくるかも、ってのはあるような気がします。
<Z世代>について言えば、「デジタルネィティブ」「SNS」「コロナ」…が大きいいかなぁ。
「ドナルド・トランプ」とかも、結構大きく作用してるかも。
デジタルネイティブで、SNSを駆使する<Z世代>は、情報感度も高いし、色々なことを「知っている」。
「エブエブ」の娘も、LGBTQを自認し、同棲のパートナーとしっかり関係性を気付きあげている。
僕らの世代なんかだったら、この「性的自認」の問題だけで壮大で深刻なストーリーになっちゃうように思うんですが、彼女たちにとっては(個々での内心の葛藤はともかく)周りとの軋轢はあるとしても、自分の中での決着は比較的早くついているように見えます。
それは他のことでもそうで、「気候変動」とか「人権問題」とか、色々なことで彼らは自分で情報を精査し、そこから自分のスタンスを決めているように見えます。
しかし「自分で調べて、自分でスタンスを決め」たとしても、そのことで世の中が変わるわけではない。
自分自身の<気付き>が早いだけに、世の中(上の世代)が動かないことに対するフラストレーションは高まりやすく、その苛立ちが「絶望」につながり、「虚無」に取り込まれやすくなる。
…というのが僕の感覚かなぁ。
あってるかどうかは分かんないけど、そんな風に「エブエブ」の娘のことは感じたし、本書を読みながら考えました。
「若い世代が正義感やリベラルな考えに取り憑かれるのは当たり前。いずれ<現実>を知って、現実的な考え方や判断をする時がやってくる」
そういうのは簡単だけど、彼らほど僕自身が色々な情報に対してビビッドに接しているとは思えないし、勉強している自信もない。
広く、深く情報を扱うようになった彼らにとって、「いずれ知る<現実>」ってなんやねん…とも思うんですよね。
それって、結局上の世代が押し付ける「絶望」と「混乱」でしかないんじゃないの…とも。
(そうあってほしくなし、そうあるべきでもない…からこそ<Z世代>は訴え、行動するのかも)
まあ、「分からない」が今の立ち位置かなぁ。
本書で思ってた以上に色々なことが自分の子供たちの世代にはあるのだということは垣間見得ましたが、それが実感できたような気はしないし、その良し悪しを言える気分でもない。
こういうのって「批判」するのは簡単だけど、あんまりそれに意味があるようにも思いませんしねぇ。(かつての「新人類」としても)
ただ今の世界のありようを解像度をあげて考えていく上において、<Z世代>の感覚は重要なんだなとは思いました。
あくまでも<自分>のため、なんだけどw。