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題名はちょっと大袈裟だけど、まあまあ近いスタンスではあります。:読書録「この国を蝕む「神話」解体」

・この国を蝕む「神話」解体
著者:佐々木俊尚
出版:徳間書店(Kindle版)

佐々木俊尚さんは毎日新聞出身なんですが、最近だと保守寄りと見られてることが多いのかな?
割とネット関係の記事をずっと書いてきてこられてて、その時代から何やかんやと僕は著作を読ませていただいています。
「保守より」と言うよりは、「現実主義者」って言った方がいいと思うんですが、そう言うスタンスの人って、割と「右だ〜」って言われがちなのが昨今。
僕だって、自己認識としては「心情リベラル」なんだけど、意見によっては「右寄り」って見られることもあるんじゃないかな〜。


本書は佐々木さんが、
21世紀になって、主にメディアが抱えている主義主張やスタンス、戦略方針が時代とずれて来てんじゃないの
ってことを指摘した作品と言えるでしょう。
そう言う意味じゃ、(メディアの自己認識が「リベラル」なだけに)、リベラル批判・左派批判的な色彩が強いかも。
じゃあ、保守的主張なのか
…って言うとそんなことはなくて、多分右派的言動に対しては佐々木さんは大半は「もっと時代錯誤」と思ってるんじゃないか、と思うんですけどね。
そう言う意味じゃ、右派も左派も賞味期限切れ…って言ったら言い過ぎかw。


第一章 社会の神話
「弱者」と言う幻想
「物価高=悪」のステレオタイプ
監視社会は「悪のビッグブラザー」ではない
なぜ在外邦人は「上から目線」で日本を語るのか

第二章 反権力の神話
日本に必要なのは「反権力」ではなく「反空気」だ
反権力は、なぜカッコ悪くなったのか
「批判するなら対案を」ではなく「批判するなら理念を示せ」

第三章 メディアの神話
新聞の影響力は団塊の世代の退場とともに終わる
「レモン市場」で考えるフェイクニュース問題
「職能集団社会」が未来日本の民主主義を支える
なぜテロリストは「物語化」されるのか

第四章 右派と左派の神話
天皇の政治利用がなぜ2010年代に浮上したか
知識人の権威はなぜ失墜したか
なぜ「ウクライナ人は降伏せよ」と古い知識人は言いたがるのか
穏健化していた社会運動はなぜ先祖返りして過激化したか
自由を侵そうとする人たちはなぜ右派から左派に移ったか

第五章 環境と生活の神話
脱ダムは水害が少なかった時代の幻想だった
「江戸時代に戻れ」と言うが、当時は森林が破壊され、稲作も限界だった
なぜオーガニック信仰の人たちは容易に陰謀論を信じてしまうのか
土地神話が終わり、土地を押しつけ合う「ババ抜き」時代がやってきた
「理想的な夫婦」「素晴らしい結婚」は現代における抑圧である


<社会の統合を取り戻すためには、分断を広げるだけのアイデンティティ・ポリティクスを乗り越える必要がある。その点において、二十一世紀のトレードオフ社会に適合したパワーバランス視点の重要性がまさに浮上してきているのだ。  
社会をふたたび統合したうえで、社会をどう維持し、どう改良していくのかという建設的な姿勢がこれからは必要だ。古くさい「右派と左派」などではなく、健全な議論軸が新たに求められているのだ。>



この点は僕も賛成で、その「トレードオフ」の置き方で佐々木さんとは意見を異なるところもあるんだけど、それはスタンスの置き方の違いであって、根本的に排除し合うようなことではないと思っています。
まあ、ここら辺は「<公正>を乗りこなす」の<正義>と<公正>の話にも近くて、あそこで言ってる<正義>の場で議論すべき…ってことだと思うんですけどね。


とはいえ、まあ色々難しいところはある。
「<公正>を乗りこなす」でも指摘されてた<叫び>の問題とかね。
そこをどう言う風に<正義>の場に反映させていくのか…ってのは、当事者にとっては「トレードオフ」なんて言ってられないだけに、慎重なスタンスが求められるし、時には(当事者にとっては)抑圧的にうつるかもしれない。
左派の今の問題は、ここらへんのポジショニングの問題…って気も個人的にはしています。


なんにせよ、今、メディアやSNSで議論になっているあれやこれやについて、自分なりの考えをまとめるには結構便利な一冊と思います。
まあ、「蝕む」って言葉とかのチョイスは、ちょっと煽りすぎな気もしますけどね。
強い言葉は、時に反発の種になって、党派性に繋がりかねないし…。
佐々木さんはそう言う人じゃないと思ってますが。


#読書感想文
#この国を蝕む神話解体
#佐々木俊尚

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