本格推理短編小説。好きな人は好きでしょうね。(僕は好きです):読書録「可燃物」
・可燃物
著者:米澤穂信
出版:文藝春秋
<彼らは葛をよい上司だとは思っていないが、葛の操作能力を疑う者は、1人もいない。>
「葛(クズ)だからな〜。フロスト警部みたいな人格的に欠陥のある、いい加減な刑事なんかな〜」
とか思いながら読み出したんですが、全然そんなことはない。
主人公の「葛警部」は極めて優秀な刑事。
優秀過ぎて、部下に任さず、自分で事件を片付けてしまうので、
「部下の育成能力があるのか?」
と上司から疑念を持たれるくらい。
疑念は持たれるんだけど、あまりにも優秀なんで事件から外すこともできない、と。
…と言うわけなので、フロストみたいに人間的にグダグダなところが描かれて、それを楽しむ…と言う話ではありません。
物語は「事件発生」から「解決」まで一直線。
捜査も極めてオーソドックスで、リアリティがあるものです。
その過程で、「どこか引っかかる」と言うところを葛が見つけ、その引っ掛かりが解けることで事件の真相が見える…と言う内容です。
崖の下(凶器探し)
ねむけ(目撃証言の真偽)
命の恩(死体を解体した理由)
可燃物(放火の動機)
本物か(人質事件の真相)
収められているのは5つの短編で、葛の推理は合理的で、物語はどれもシュアにまとまっています。
その分、「遊び」みたいなもんはあんまりないんですがw、まあそう言うのを求める話じゃないのかな、と。
「黒後家蜘蛛の会」みたいな本格推理の短編集が好きな人にはピッタリの作品。
「人間が描けてないと…」
って人はご遠慮ください。
#読書感想文
#可燃物
#葛警部
#米澤穂信