シリアス版「鎌倉殿の13人」?:読書録「修羅の都」
・修羅の都
著者:伊東潤
出版:文春文庫(Kindle版)
「鎌倉殿の13人」の先読みのために購入w。
本書では「平家滅亡」から「頼朝の死」までが描かれています。
「鎌倉殿の13人」は三谷幸喜らしく、基本的なストーリーは歴史の流れをフォローしつつ、随所にコメディ調を盛り込んでいますが、本書は(題名からして当然ですが)ガチ。
鎌倉幕府成立後、頼朝を中心として行われた陰惨な一族滅殺の動きを追っています。
キャラクターの味付けとしては、
頼朝は、「武家政権」の樹立と安定を目指す冷徹で有能な政治家
北条義持は、頼朝の薫陶を受け、頼朝以上の策略家としての顔を持つようになる影の実力者
北条政子は、頼朝を慕い、自分達の子供を大切に思いつつも、頼朝の夢である「武士の府」の成立への思いをも共有し、その間で苦悩する女性
ってところでしょうか。
彼らを中心として、作品の焦点は、「大姫(頼朝と政子の娘)入内」問題以降、頼朝の戦略が破綻していく過程にあります。
頼朝が死ぬ前に「朝廷政略」に踏み込み、「武士の府」としての鎌倉政権の基盤を危うくしてしまった…というのは歴史的史実。
作者は「なぜそうなってしまったのか?」という点に推理を巡らせ、そこに「頼朝の老い」を見ます。(この時期の頼朝の動静は現存する「吾妻鏡」にもなく、謎になっています)
ここが読みどころ…ではあるんですが、まあチョットしんどいなぁ…って印象もありましたw。
(朝廷と武士政権の関係というのはナカナカ複雑です。
構図としては最終的には「承久の乱」で武家側が朝廷側に完全勝利するのですが、実際には武家政権と朝廷は「補完的関係」を継続します。
そのことが「建武の新興」「足利政権の成立」につながりますし、戦国の混乱から江戸幕府の成立、そして「幕末維新」と、この距離感には独特なものが残り続けます)
本書で一番興味深かったのは「大姫」の描き方。
木曾義仲の息子(義高)の許嫁でありながら、義高の死に衝撃を受け、調停戦略(入内)の具にされながら、20歳の若さで病死する悲劇の女性
…なんですが、本書では「頼朝の死後」への重大な示唆を残す役柄となっています。
それに比べたら、本書の政子なんか、ただただ右往左往するばかり…って印象もあったりしてw。
「頼朝の死」以降、「承久の乱」までは今度は鎌倉武士の間での陰惨な勢力争いが繰り広げられます。
この点は続編「夜叉の都」で描かれるようです。
最初はそこまで一気に読もうと思ってたんですが、本書を読み終わったら、なんかお腹がいっぱいになっちゃいましたw。
続きは「鎌倉殿の13人」がもうチョット先に進んでからでいいかな。
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