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全くもって「非生産的」なワードなんだけど、それが流行るのには社会的な必然性もある:読書録「親ガチャという病」

・親ガチャという病
著者:池田清彦、中島義道、和田秀樹、室井佑月、森達也、香山リカ、土井隆義
出版:宝島社新書


「ネット発の流行語」を取り上げ、その裏にある日本社会の構造的な問題点に踏み込む…という意図の本(たぶん)。


<「時代を一言で象徴するキーワード」など、あるはずがない。しかし、話題を集めている言葉を突破口に、その背景にあるかもしれない何かを手探りで捉えようとする試みに意義を見いだしたい。
本性が照射しようとするものは、日本を覆う「空気」の一片だ。>(宝島社新書編集部)


その意気や良し。
…なんですが、ちょっと作りを急ぎすぎてませんかねって読後感もあるかな。


社会学者の土井隆義さんの「親ガチャ」に関する論考は、もともとウェブ記事に発表されたものを踏まえて寄稿してもらっているので、結構「骨」のある内容になっています。
単に「親ガチャ」という言葉の問題点を指摘するのではなく、日本社会にある「孤立感」の深まり、そのベースにある社会的・経済的格差の問題、蔓延する「閉塞感」等について論考し、決定的人生観がなぜ広がっているかを考察しています。
そもそも「親ガチャ」という表現が、自分自身が極めて厳しい状況にある「弱者」の自分の状況の「ぼかし表現」(聞いている人に負担をかけないためのぼかし)だろうという指摘は興味深かったです。



それ以外の「流行語」については、インタビューで構成されています。
まあ、ある意味「旬」の言葉を取り上げてるだけに、内容については「玉石混交」感も。
これは語り手の問題というよりは、インタビュアーが深めきれてないってことなんじゃないかな、と思います。

・無敵の人:和田秀樹
・キャンセルカルチャー:森達也
・ツイフェミ:室井佑月
・正義バカ:池田清彦
・ルッキズム:香山リカ
・反出生主義:中島義道

和田秀樹さん、池田清彦さんあたりは、かなり「コロナ対策」に言及した内容になってるんですけど、なんかそこら辺が僕にはノイズになっちゃいました。
基本的に言ってることはおかしいとは思わないんですが、このタイミングで因果関係までは分かってない事象(コロナのこと)を断定的に捲し立てられてもな〜って意味で。
ここら辺は編集が考慮すべき点とも思いますがね。



読む前から個人的に興味があったのは、少し前にTwitterでちょっとした騒動のあった室井佑月vsフェミニストを踏まえての「ツイフェミ」、そのベースにある「キャンセルカルチャー」について、でした。
僕の考えは室井佑月さんが言うように
「フェミニズムの主張そのものには賛同するところも多いが、Twitterでの言動はあまりにも過激すぎて、結局賛同者を広げることに繋がっていないし、むしろ支持者を減らしている」
<広く一般の人々に問題意識を共有し、真摯に社会をよりよい方向に変えていきたいと願うのであれば、大切なのは、異論、許すまじ!という勢いで攻撃する姿を見せ続けることではないような気がするのです。>
って考えに近いです。
問題提起の重要さは理解してるつもりですし、「トーン・ポリシング」という指摘もわからなくはないんですが、その主張を社会が共有する方向に、ツイフェミ的なアクションが本当に役に立つのかな…って意味で。
ま、僕が「男性」であるのは確かなので、その点において一定の留保をつけざるを得ないのも確かですけどね。



それにここ数日起きている「映画業界」でのセクハラ・パワハラ事案(榊英雄監督の件)なんかをフォローしてると、
「う〜ん…」
って感じにもなってます。
一般企業ではあり得ない事案とは思いつつも、それが「ありうる」関係性も一部にはまだあるのだという事実。
それを「一部」として矮小化していいのかどうか…。
難しいですね、これは。


本書については「こういう言葉がネットの中で使われている」ということを知る意味においては意味があるかな、と思います。
中身はまあ、それこそ「ネット記事」を読む…くらいのスタンスがちょうどいいかな?
あっという間に読めちゃいますしw。


#読書感想文
#親ガチャという病

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