コロナ禍を「チェンジ」のきっかけとできるか?:読書録「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」
井上純一さんの「中国嫁日記」は結構好きなマンガだったんですよね。
その井上さんが経済に関するマンガを書いてるのは知ってたんですが(「キミのお金はどこに消えるのか」)、書店でパラパラって読んだら、ちょっと面倒臭そうだったんでw、スルーしてしまいました。
僕が読みたいのは「月さん」(奥さんです)とのホノボノ日中文化ギャップなので。
で、最近はご無沙汰しておったのですが、何かの書評で本書がオススメされてまして。
「お?経済本じゃないなら読んで見ようかな?」
と勢いで購入。
<「キミのお金はどこに消えるのか」というタイトルで好評をいただいていた当連載
掲載誌も変わったので心機一転‼︎
新タイトルでスタートです‼︎>
…続編でんがな…。
でも面白かったんですよね。これが。
元々はピケティが言っている「バラモン左翼とビジネスエリート右翼」について、物凄くわかりやすく説明してくれてる…ってのが読みたかったんですが(物凄くわかりやすく説明してくれています)、連載が「コロナ禍」に被っている時期だけに、そういう環境下での「積極財政政策の重要性」という点にフォーカスが当たってる感じもあって、興味深く読むことができました。
もともと僕のスタンスは、
「経済理論上どうであれ、国民生活を守るためには<積極財政>を打たざるを得ない。そうである以上、そのスタンスから<何に留意すべきか>を押さえた上で、前倒しで取り組んでいく必要がある」
…というものなので。
「経済理論なんてのは現実への対処方法でしかない」と思ってますからね。
そういう観点や、「経済か、命か」という問いかけへの回答(「両方」に決まっている)等、僕はかなり作者の考え方に近いと思います。
「コロナはいずれおさまる。その時、経済社会活動が活発化するが、その受け皿となる産業が破壊されていたら何にもならない。したがって、<経済>と<命>を守るためにも、十分な<補償>が絶対的に必要」
ってとこです。
色々な意見もあるでしょうし、正直「何が正解か」は僕にもわかりません。
わからないんですけど、ここで「緊縮財政」(プライマリーバランスを目指した財政削減や増税等)なんかしたらトンデモナイことになっちゃうのは確かだと思います。
実際「失われた20年」だか「30年」だかは、その帰着でもあるわけですから。
世界全体が「積極財政」を前提とした経済政策に舵を切る以上、そこに歩調を合わせて経済政策を打っていくのは日本にとって必須のスタンスかと。
大きな流れに反してもいいことなんか一個もないですからね。
しかし経済政策に限らず「コロナ禍」が日本の統治機構・制度のガタガタぶりを炙り出してくれてるのは間違いないですねぇ。
オリンピックの方を見たら組織運営体制や社会文化の方でもいろんなことが見えてきてる感じ。
そこには「反動」的な動きもあります(LINEの件にはそこら辺の嫌らしさも感じます)。
ただそこに屈してしまったら、今後の日本の先行きはかなり危ういものになっちゃうんじゃないかなぁ…。
いや、マジで危惧してます。
しかしこの本、思ってたより面白かったなぁ。
先行してるシリーズ本も読もうかしらん。
*「バラモン左翼とビジネスエリート右翼」は、ソ連崩壊以降、左翼も右翼も社会的経済的弱者(「大衆」とも言えます)から遊離して理論を振りかざし、「大衆」を置き去りにした政治・経済運営を行っている「エリート主義」のことです。
…たぶん。
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